ンガッパ

ンガッパとは：チベット仏教の在家密教行者

ンガッパ（チベット文字：སྔགས་པ་; ワイリー方式：sngags pa）は、チベット仏教、特にニンマ派において、僧院に属さない在家の密教行者やヨーガ行者を指します。梵語のmantrin（真言持者）に相当し、ガクパ、ンガクパとも呼ばれます。女性形はンガクマまたはンガクモです。

ンガッパの特徴

伝統的に、ンガッパは髪を伸ばして髷を結い、白い衣を身につけます。これは、出家僧が剃髪し、サフラン色の衣を着用するのとは対照的です。

ラマとの関係

ラマはチベット語で導師を意味し、必ずしも僧侶を指すとは限りません。ンガッパは在家でありながらラマと呼ばれることもあります。ナムカイ・ノルブ・リンポチェは、チベットのラマの生活スタイルを以下の4つに分類しています。

1. 僧院で生活する僧侶
2. 家族とともに村に住む在俗の行者（ンガッパ）
3. 弟子たちと移動する在俗の行者
4. 洞窟などに住むヨーガ行者

ニンマ派においては、具足戒を受けた僧尼は「ゲンドゥン・マルポ」（赤いサンガ）、在家行者は「ゲンドゥン・カルポ」（白いサンガ）の一員とされます。カギュ派にも「カルギュー」（白い相承）と呼ばれる在家密教行者の伝統があり、ドゥクパ・クンレーのような瘋狂の智慧を体現した「ニョンパ」と呼ばれる人々を輩出しました。

ンガッパの生活と役割

多くの場合、ンガッパは妻帯し、子供をもうけます。世俗の中で修行する一方で、隠棲修行に時間を費やし、村人の求めに応じて儀礼や法要、祭祀を執り行います。ンガッパの家系には、それぞれ伝承される守護尊（イダム）や護法尊の儀軌があります。

家系の出身でなくとも、ダルマの実践に打ち込み、血脈の伝持者の指導を受け、適切なサマヤの誓いを守り、灌頂と伝授を受けた者であれば、ンガッパと見なされます。重要な血脈相承は口頭伝承によって伝えられます。

多様なンガッパ

ンガッパには様々なタイプが存在します。儀式や加持祈祷を行う「多彩なンガッパ」、内的なヨーガを実践するゾクチェンの修行者である「白いンガッパ」、誕生、婚姻、葬儀、占いなどを行う「黒いンガッパ」などがいます。黒いンガッパは、幽霊や精霊を鎮めたり、悪霊祓いを行うことで知られています。

ンガッパは家族と共に村に住むことが多いですが、タツァンと呼ばれる寺院で共同生活を送る者もいます。また、大成就者（マハーシッダ）と類似した存在もおり、実際に大成就者をンガッパと呼ぶこともあります。

チベット仏教におけるンガッパの重要性

チベット学者のサム・ヴァン・シャイクは、「在家の密教行者（ンガッパ）はチベットにおいてありふれた人物像となった。そしてそれはチベット仏教の歴史を通じてつねに変わることはなかった」と述べています。ギュルメ・ドルジェは、ンガッパを「出家僧ではなく、家長として生活していることもあり得る、真言の行者」と定義しています。

ンガッパは、チベット仏教の多様性と深さを象徴する存在であり、地域社会において重要な役割を果たし続けています。

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