ヴィルト第2彗星

ヴィルト第2彗星（81P/Wild）についての詳しい考察

ヴィルト第2彗星は、英語で81P/Wildと呼ばれる短周期彗星であり、その公転周期は約6.41年です。この彗星は1978年1月6日に、天文学者パウル・ヴィルトによってスイスのベルン大学にあるツィンマーヴァルト天文台で発見されました。発見当初からの観測により、1974年には木星に近づいていたことが明らかになり、それがこの彗星の軌道に大きな影響を与えました。具体的には、木星に至近距離で接近したことで、公転周期が以前の約40年から現在の6年弱に短縮されました。

核の特性と物理的性質

ヴィルト第2彗星の核は楕円体の形をしており、サイズは約5.5 km、4.0 km、3.3 kmと推定されています。この彗星の密度は0.38から0.6 g/cm³であり、質量はおおよそ1.4から2.3×10¹³ kgと考えられています。これらの物理的特性は、彗星の構成と進化を理解する上で重要な指標です。

軌道の変遷

ヴィルト第2彗星は、火星の軌道付近に最近点を、そして木星の周回軌道近くに遠日点を持つ木星族彗星です。過去の軌道分析によると、この彗星はかつて木星の近くから天王星の周辺を約40年かけて公転するケンタウルス族の軌道を取っていました。しかし、1974年の木星への近接によって、新たな摂動を受け、近日点が4.95 auから1.49 auに、また公転周期も43.17年から6.17年へと変化しました。このような変化は、木星の強力な重力に起因しています。

NASAの探査活動

1999年2月7日、NASAのディスカバリー計画に基づく探査機スターダストが打ち上げられました。この探査機は2004年にヴィルト第2彗星に接近し、星間ダスト及び彗星のコマから得られた微粒子を地球に持ち帰りました。この接近時には、72枚の画像が撮影され、平坦な地形や切り立った崖、さらには2 kmに達する構造が確認されました。スターダストが持ち帰った資料は、ユタ州に着地した後、分析が行われました。

その結果、スターダストによって採集された微粒子からは、輝石やカンラン石、鉄とニッケル、さらにはアミノ酸の一種であるグリシンも発見されました。特にグリシンの発見は、彗星が宇宙起源の生命の元となる物質を含む可能性があることを示唆し、宇宙における生命の起源に関する研究に新たな視点を提供しました。この発見は、他の彗星と同様の結果を得たチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星と関連付けて考察されています。

2011年には、アリゾナ大学の研究者たちが、液体水が存在した可能性を示す証拠を発表しました。彼らは、液体の状態で生成される鉄や銅の硫化物を確認し、これが彗星の形成過程にどのように関連しているかの詳しい議論が行われました。

また、2014年には、超新星爆発によって生成された可能性のある微小な星間ダストが発見され、これが太陽系形成の初期段階における、内側から外側への物質移動を示唆するものと考えられています。

このように、ヴィルト第2彗星は、短周期彗星の中でも特異な存在であり、その探査結果は生命の起源や太陽系の形成に影響を与えると期待されています。

もう一度検索