ヴィータウタス・ランズベルギス

ヴィータウタス・ランズベルギス：リトアニア独立の立役者

ヴィータウタス・ランズベルギス（Vytautas Landsbergis, 1932年 10月18日 - ）は、リトアニアの政治家、音楽学者であり、リトアニア独立運動を主導した人物として知られています。ソ連からの独立回復後、最高会議議長として国家元首を務めました。

生涯と業績

1932年、ソ連併合前のリトアニアのカウナスに生まれました。1955年にリトアニア音楽学校音楽科を卒業後、1968年に音楽博士号を取得。1952年から1990年まで音楽理論と作曲を教え、10冊の著作を著しました。フルクサスの創設者ジョージ・マチューナスとも交流があり、1978年から1990年までリトアニア音楽アカデミーで教鞭をとりました。特に、リトアニアの代表的作曲家ミカロユス・チュルリョーニスの研究者として名高いです。

ランズベルギスの家系もまた、芸術や政治に深く関わっています。父は建築家のヴィータウタス・ランズベルギス＝ジェムカルニス、息子は詩人で演劇監督のヴィータウタス・V・ランズベルギス、娘は音楽家のユーラテ・ランズベルギーテとビルテ・ランズベルギーテ＝ツェハナヴィチエネです。また、政治家のガブリエリュス・ランズベルギスは孫にあたります。

政治家としての活動

1988年、リトアニア独立運動組織サユディスの創設に参画し、政界入り。1990年の選挙でサユディスが勝利すると、リトアニア共和国最高会議議長に就任し、ソ連からの独立を主導しました。1990年3月にはソ連に対して独立を宣言し、ソ連の封じ込めを退け、リトアニアは独立を回復。アイスランドが最初にリトアニアの独立を承認しました。ランズベルギスは、西側諸国の支援が不十分であると批判し、ミハイル・ゴルバチョフの民主化路線にも懐疑的な見方を示していました。1991年9月、ソ連はリトアニアの独立を承認し、名実ともに独立を達成しました。

1993年には新党「祖国同盟」を結成。1996年の議会選挙で勝利し、再び1996年から2000年まで議会議長を務めました。1997年の大統領選挙では落選しましたが、決選投票でヴァルダス・アダムクスを支持し、彼の大統領当選に貢献しました。2000年の議会選挙では議席を減らしました。

2004年には欧州議会議員に当選し、ブリュッセルに事務所を構えました。同年に行われたリトアニア議会選挙でも議席を確保しました。

EUにおける活動：共産主義標章の禁止提案

2005年1月、ランズベルギスはEUにおいてナチス・ドイツとソビエト連邦の標章を禁止することを提案。フランコ・フラッティーニ欧州委員も議論に応じる姿勢を見せましたが、イタリア共産党の抗議により発言を撤回。この提案はイタリアで大きな騒動を巻き起こしましたが、イタリアの主要メディアはランズベルギスに注目し、インタビューを掲載しました。しかし、この提案はEU全体での合意を得られず、実現には至りませんでした。

現在、ヨーロッパではハンガリー、ポーランド、バルト三国、ウクライナがナチスとソ連の標章を禁止しており、ドイツとフランスはナチスの標章のみを禁止しています。

ロシアとの関係

ランズベルギスは、ロシアがバルト三国に対して影響力を行使することに強く反対しており、ロシアの行動に常に警戒感を示しています。彼は、ロシアがバルト三国を経済的、政治的に支配しようとしていると主張し、ソ連時代の国歌が復活するなど、「逆コース」が進んでいることを懸念しています。そのため、リトアニアや他のEU新規加盟国に対し、「東からの脅威は終わっていない」と警告しています。

日本との関わり

1992年に初訪日し、チュルリョーニスに関する講演を行いました。2009年の訪日時には、青山学院大学で「鉄のカーテン解体から、ベルリンの壁崩壊へ」という講演会に出席し、「1988-1989年におけるEUと統合：リトアニアの貢献」と題した講演を行いました。

著書

『チュルリョーニスの時代』（佐藤泰一・村田郁夫訳、ヤングトゥリープレス、2009年）