ヴィープリ州

ヴィープリ州の歴史

ヴィープリ州は、フィンランドが独立する以前、ロシア帝国の一部であった時代から、激動の歴史を歩んできました。その起源は、1744年にロシア帝国によって設立されたヴィボルグ県に遡ります。この地域は、ニスタット条約（1721年）とオーボ条約（1743年）を通じてスウェーデンからロシア帝国に割譲されたカレリアの一部であり、当初は「オールド・フィンランド」と呼ばれていました。

ナポレオン戦争期には、スウェーデンが反ナポレオンの立場を取っていましたが、ティルジットの和約（1807年）によってロシアとフランスが和解。その翌年、ロシアはスウェーデンと戦端を開き、1809年のフレデリクスハムンの和約でフィンランド東部がロシアに割譲され、フィンランド大公国が成立。大公はロシア皇帝が兼任することになりました。

1812年、ヴィボルグ地区はフィンランド大公国に割譲され、ヴィープリ州が正式に発足します。この措置は、ロシア帝国に対するフィンランド人の反発感情を緩和するためのものでした。しかし、1864年にはシエスタルヨキがサンクトペテルブルク県に移管されています。

1917年にフィンランド大公国が崩壊し独立を果たすも、ヴィープリ州はそのまま維持されました。当時の州都ヴィープリは、フィンランド第二の都市として栄えていました。

第二次世界大戦とヴィープリ州の終焉

第二次世界大戦が勃発すると、ヴィープリ州は再び激動の時代を迎えます。1939年、ソ連はフィンランドに不可侵条約の破棄を通知し、冬戦争が開始。1940年のモスクワ講和条約によって、ヴィープリを含む州の大部分がソ連に割譲され、カレロ＝フィン・ソビエト社会主義共和国に編入されました。この結果、州の住民の3分の2がフィンランドへ移住、または難民となりました。

1941年、継続戦争が勃発し、フィンランド軍は一時的にヴィープリ州を奪還しましたが、1944年のヴィボルグ-ペトロザヴォーツク攻勢によって、再びソ連に占領されます。1947年のパリ条約によって、ソ連による占領が正式に決定。この地域の地名はソ連によって改名され、ヴィープリ州は事実上解体しました。

フィンランド側に残された地域では、1945年にキュミ州が発足。ヴィープリ州の歴史は、この時をもって終焉を迎えました。

経済と社会

ヴィープリ州は、サンクトペテルブルクに近いという地理的条件から、経済的に発展していました。1856年のサイマー運河の開通は、湖沼地帯とヴィボルグ湾を結びつけ、地域の発展に大きく貢献しました。

また、鉄道網の発達も重要で、1870年のRiihimäki – Saint Petersburg Railway、1894年のVyborg–Joensuu railroad、1917年のSaint Petersburg – Hiitola railroadなどが、経済発展を加速させました。花崗岩、大理石、泥鉄鉱などの採掘や林業も主要な産業であり、20世紀初頭には、ヴオクシ川上流に水力発電所も建設されています。

州域の変遷と自治体

ヴィープリ州は、9つの地区に分割されていました。

Ranta (Stranda)
Äyräpää
Käkisalmi (Kexholm)
Kurkijoki (Kronoborg)
Kymi (Kymmene)
Lappee (Lappvesi)
Salmi (Salmis)
Sortavala (Sordavala)
Jääski (Jäskis)

また、州内には以下のような都市や街が存在しました。

都市
ハミナ (Hamina) - フレデリクスハムン (Fredrikshamn)
コトカ (Kotka)
カキサルミ (Käkisalmi) - ケックスホルム (Kexholm)
ラッペーンランタ (Lappeenranta) - ヴィルマンストランド Villmanstrand
ソルタヴァラ (Sortavala) - ソルダヴァラ Sordavala
ヴィープリ (Viipuri) - ヴィボルイ (Viborg)

街
コウヴォラ (Kouvola)
コイヴィスト (Koivisto) - ビョルコ (Björkö)
ラフデンポフヤ (Lahdenpohja)
ラウリツァラ (Lauritsala) (1967年にラッペーンランタに吸収合併)

歴代知事

ヴィープリ州には、多くの知事がいました。

Carl Johan Stjernvall 1812-1815
Carl Johan Walleen 1816-1820
Otto Wilhelm Klinckowström 1820-1821 (acting) ja 1821-1825
Carl August Ramsay 1825-1827 (acting) and 1827–1834
Carl Gustaf Mannerheim 1834-1839
Fredric Stewen 1839-1844
Casimir von Kothen 1844-1846 (acting) and 1846–1853
Alexander Thesleff 1853-1856
Bernhard Indrenius 1856-1866
Christian Theodor Åker-Blom 1866-1882
Woldemar von Daehn 1882-1885
Sten Carl Tudeer 1885-1888 (acting) and 1888–1889
Johan Axel Gripenberg 1889-1899
Nikolai von Rechenberg 1900-1902
Nikolai Mjasojedov 1902-1905
Konstantin Kazansky 1905 (acting) and 1905
Mikael von Medem 1905-1906 (acting)
Nikolai von Rechenberg 190-1907
Birger Gustaf Samuel von Troil 1907-1910
Frans Carl Fredrik Josef von Pfaler 1910-1917
Vilho Sarkanen (acting) 1917
Valfrid Suhonen (acting) 1917-1918
Antti Hackzell 1918-1920
Lauri Kristian Relander 1920-1925
Arvo Manner 1925-1945

著名な出身者

ヴィープリ州は、多くの著名な人物を輩出しました。

マルッティ・アハティサーリ (Martti Ahtisaari): フィンランド共和国第10代大統領、ノーベル平和賞受賞者
エリク・ブルーン (Erik Bruun): グラフィックデザイナー
ライラ・ヒエタミエス (Laila Hietamies): 作家
グスタフ・ハッグルンド (Gustav Hägglund): 軍人
シモ・ヘイヘ (Simo Häyhä): 軍人、狙撃手 (狙撃手史上最高確認戦果)
マックス・ヤコブソン (Max Jakobson): 外交官
アルマス・ヤルネフェルト (Armas Järnefelt): 作曲家、指揮者
アールネ・ユーティライネン (Aarne Juutilainen): 軍人
スロ・オンニ・コルッカ (Sulo Onni Kolkka): 軍人、狙撃手
グスタフ・コンッパ (Gustaf Komppa): 化学者
ユリウス・クロン (Julius Krohn): Fennoman
エドウィン・リンコミエス (Edwin Linkomies): 首相
ヴェイヨ・メリ (Veijo Meri): 作家
エルンスト・ミエルク (Ernst Mielck): 作曲家
マサ・ニエミ (Masa Niemi): コメディアン
アルゴ・ニスカ (Algoth Niska): 探検家
ユホ・ニウッカネン (Juho Niukkanen): 首相
レンナルト・オシュ (Karl Lennart Oesch): 軍人
ラウリ・クリスティアン・レランデル (Lauri Kristian Relander): 第二大統領
ウスコ・サンタヴオリ (Usko Santavuori): ラジオ・レポーター
ラウリ・アラン・トルニ (Lauri Törni): 軍人
ウノ・ウルベリ (Uno Ullberg): 建築家
* ヨハネス・ヴィロライネン (Johannes Virolainen): 首相

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