ヴェストファーレン福音主義教会

ヴェストファーレン福音主義教会（Evangelische Kirche von Westfalen, EKvW）は、ドイツ福音主義教会 (EKD) に加盟する20の州教会の一つであり、公法上の社団として位置づけられています。事務局はノルトライン・ヴェストファーレン州のビーレフェルトにあり、約200万人の教会員を擁し、26の教会地区と490の教会共同体によって運営されています。ルター派と改革派教会による合同教会であり、福音主義合同教会 (UEK) にも加盟しています。神学アカデミー（州教会研修所）がウナ郡シュヴェルテに、教会音楽専門大学がヘルフォルトに置かれています。

管轄地域

教会管轄地域は、かつてのプロイセン王国ヴェストファーレン州の地域です。現在のノルトライン・ヴェストファーレン州におけるアルンスベルク行政管区、デトモルト行政管区（リッペ郡を除く）、ミュンスター行政管区が主な管轄地域です。ただし、プロイセン王国時代とは一部異なり、ニーダーザクセン州のディープホルツ郡シュテムスホルンやオスナブリュック郡バート・エッセンの一部も含まれます。一方で、ノルトライン・ヴェストファーレン州のホーホザウアーラント郡ハレンベルクはヘッセン＝ナッサウ福音主義教会に属し、ラインラント＝プファルツ州のアルテンキルヒェン郡の一部はヴェストファーレン福音主義教会の管轄です。

歴史

宗教改革導入

1800年以前のヴェストファーレン地域は、有力領邦に組み込まれなかったため複雑な変遷をたどり、宗教改革が早くに導入された地域を含んでいました。神聖ローマ帝国のヴェストファーレン・クライスに属し、ケルン大司教領、ヴェストファーレン公国、ミュンスター大司教領、パーダーボルン司教領、ミンデン司教領、マルク伯領、ラーヴェンスベルク伯領、ナッサウ‐ジーゲン伯領などに分かれていました。ミンデン司教領の大半はカトリック信仰を守りましたが、ヴェストファーレンの多くの地域は宗教改革を受容し、ルター派が勢力を持ちました。ジーゲンとその周辺地域は改革派教会の影響を強く受けました。ミンデン、ヘルフォルト、ゾースト、ドルトムントなどの都市が宗教改革導入に大きな役割を果たしました。

プロイセン王国への併合と合同教会成立

マルク伯領、ラーヴェンスベルク、ミンデンは17世紀に、テックレンブルクは18世紀にブランデンブルク＝プロイセンに併合され、周辺地域も1803年以降プロイセン王国に組み込まれました。ミュンスターを県都とするヴェストファーレン県が設立され、宗務局が置かれました。1817年の宗教改革記念祭において、フリードリヒ・ヴィルヘルム3世はルター派と改革派教会を合同したプロイセン福音主義教会の結成を命じました。この合同は、プロイセンの福音主義信徒が聖餐を共にすることを意味しました。合同教会成立に際して強い批判も起きたため、信仰告白を一つにした教憲を制定することはできませんでした。ルター派と改革派教会共同体は自派固有の信仰告白を保持しながら、合同福音主義教会であるプロイセン福音主義教会が成立しました。

プロイセン州時代（ヴァイマル共和政期及びナチス・ドイツ期）

第一次世界大戦後、ドイツ帝国が終焉し領主による教会支配が終わると、プロイセンの領邦教会は教会統治の変更を余儀なくされました。1922年に古プロイセン領邦教会は新教憲を制定し、古プロイセン合同福音主義教会（EKapU）と改称し、キルヘンプロヴィンツ（教会州地区）の組織は民主化されました。ナチス・ドイツの統治下において、ヴェストファーレンの福音主義教会は数少ない無傷の教会と見なされていました。1933年から1936年の間、ナチ党員のブルーノ・アドラーが教会監督として統治しました。

1945年以降

第二次世界大戦後の1945年に教会名称をヴェストファーレン福音主義教会に変更し、1953年に新教憲を採択しました。戦後の再出発後はプレゼス（議長）1人にまとめられました。最初の議長はクラウス・コッホでした。事務部門はミュンスターからビーレフェルトに移転し、州教会事務局という名称になりました。1945年、古プロイセン合同主義福音教会に属していた州教会は加盟教会間の結びつきを緩める協定を結びました。2003年に福音合同教会は他の合同教会州教会と共に新たな州教会連合組織である福音主義合同教会を結成しました。

州教会指導部

ヴェストファーレン福音主義教会の最高指導者は州教会総会で選出されるプレゼス（議長）であり、任期は8年です。プレゼス（議長）は牧師として任職しており、州教会の霊的、法的な指導者であり、州教会総会議長も兼ねています。1948年以前は、州教会運営において総地区長、宗務局長、プレゼスの3人が最高指導者でした。1947年に3人の最高指導者による教会運営を１人のプレゼス(議長)による形態に移行しました。

信仰告白

ヴェストファーレン福音主義教会は合同教会であり、ルター派、改革派、合同派の教会共同体によって構成されています。教憲前文第Ⅱ項において、この州教会の信仰告白が規定されています。全ての教会共同体は使徒信条、ニカイア信条、アタナシオス信条を共通の信仰告白としています。ルター派教会共同体ではアウクスブルク信仰告白、改革派教会共同体ではハイデルベルク信仰問答が信仰告白として認められています。

組織構造

ヴェストファーレン福音主義教会は、教会共同体（Kirchengemeinde）、教会地区（Kirchenkreis）、州教会（Landeskirche）の3層構造になっています。教会共同体は地域社会に根ざした基底組織であり、長老会が指導を担っています。複数の教会共同体が集まって教会地区を形成し、地区総会が意思決定機関となっています。

礼拝式文

ヴェストファーレン福音主義教会の礼拝式文は、聖餐式の有無によって異なります。聖餐式のない礼拝では、鐘楼で鐘を鳴らし、オルガン前奏、礼拝開始の挨拶、賛美歌、交唱、旧約聖書詩編朗読、罪の告白、キリエ、恩寵の約束、グロリア唱、聖書朗読、使徒信条、説教、祈祷、主の祈り、祝祷などが行われます。聖餐式では、感謝祈願、サンクトゥス、制定の言葉、主の祈り、アグヌス・デイ、聖餐への招き、聖餐、感謝祈祷、感謝の賛美歌、祝祷などが行われます。

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