ヴォークラン (大型駆逐艦)

ヴォークラン級駆逐艦「ヴォークラン」

ヴォークランは、1930年代にフランス海軍で建造されたヴォークラン級駆逐艦のネームシップです。同型艦6隻と共に、その艦歴の大半を地中海で過ごしました。1934年に就役し、第二次世界大戦の激動期を航海しました。

設計と特徴

ヴォークラン級は、先行するエーグル級駆逐艦を改良した設計で、全長129.3メートル、全幅11.8メートル、喫水4.97メートルです。基準排水量は2,441トン、満載排水量は3,120トンでした。推進機関は、4基のデュ・テンプル製ボイラーと2基のギアード蒸気タービンで、最大出力は64,000馬力、最高速度は36ノットでした。公試運転では、79,846馬力を発揮し、39.7ノットを記録しています。燃料搭載量は、14ノットで3,000海里の航続距離を可能としました。

乗員は、平時で士官10名と乗組員201名、戦時で士官12名と下士官220名で構成されていました。

主兵装は138.6mm単装砲5基で、前部と後部の上部構造に各1基、後部煙突の基部に1基が配置されました。対空兵装は37mm単装砲4基と13.2mm連装機銃2基を搭載。魚雷兵装は550mm連装魚雷発射管2基と3連装魚雷発射管1基を装備していました。爆雷投射機も搭載され、200kg爆雷16発、予備8発と100kg爆雷12発を搭載していました。さらに、ブレゲB4 530kg機雷を40個搭載可能でした。

改造

ヴォークランは、運用中にいくつかの改装を受けています。1936年には爆雷投射機が撤去され、代わりに200kg爆雷が搭載されました。1939年初頭には、13.2mm機銃が艦橋前に移設されました。1940年5月には、37mm単装砲が連装砲に換装。開戦後、対潜戦術の見直しで爆雷投射機が復活しました。1940年6月にはイギリスのアルファ128ASDICが搭載され、後期には13.2mm連装機銃がメインマスト上に追加されています。1941年に行われた対空改装では、メインマストが37mm連装砲とブローニング機銃のプラットフォームに置き換えられています。

建造と戦歴

ヴォークランは、1929年の海軍計画に基づいて、1930年2月1日にフランスのアトリエ・エ・シャンティエに発注されました。1930年3月13日に起工、1932年9月29日に進水、1933年11月3日に就役し、1934年3月28日に正式に就航しました。しかし、就航はプロペラの損傷や試験中の岩への衝突により数ヶ月遅れました。

就役後、ヴォークランは第5軽師団に配属され、後に偵察師団に改編されました。1934年8月には、カナダ初訪問400周年を記念して、サンピエール島、ミクロン島、ハリファックス、ケベックを訪問。帰還後、第9戦隊に所属しました。1935年6月には、ドゥアルネーズ海峡で行われた観艦式に参加しています。

1936年7月にスペイン内戦が勃発すると、地中海でフランス人の支援や不介入協定の監視任務に従事しました。1939年9月に第二次世界大戦が始まると、ヴォークランはフランス輸送船団の護衛や他部隊の支援任務にあたりました。10月中旬には、重巡洋艦の護衛としてフランス領西アフリカのダカールまで航海。その後は、主に地中海に留まりました。

1940年のフランス降伏後、ヴォークランはヴィシー・フランス海軍に編入されました。1941年6月には、フランス領レバノンへの弾薬輸送作戦に参加。しかし、イギリス軍の攻撃により作戦は失敗に終わりました。その後、レバノンへの援軍輸送にも従事しましたが、イギリスの偵察機に発見され、撤退しました。

1942年11月、ドイツ軍がヴィシー・フランスを占領すると、ヴォークランはトゥーロンで自沈しました。連合国軍の空襲で損傷した後、1951年に解体されました。

その他の情報

ヴォークランの艦名は、フランスの化学者ルイ＝ニコラ・ヴォークランに由来します。

参考文献

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Rohwer, Jürgen (2005). Chronology of the War at Sea 1939–1945: The Naval History of World War Two (Third Revised ed.). Annapolis, Maryland: Naval Institute Press.
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