ヴャジマ

ヴャジマ：歴史と戦火の交錯するロシアの古都

ヴャジマは、ロシアのスモレンスク州に位置する都市であり、ドニエプル川の支流であるヴャジマ川沿いにあります。スモレンスクとモジャイスクの中間地点に位置し、古くから戦略的な要衝として、数々の戦いの舞台となってきました。2021年の時点での人口は約5万2千人です。

歴史

ヴャジマの地名は1239年の年代記に初めて登場しますが、それ以前から集落が存在していたと考えられています。当時は、リューリク朝スモレンスク公国の傍系の所領であるヴャジマ公国でした。しかし、1403年にヴャジマ公はリトアニア大公国に追われ、モスクワへ逃れました。その後、彼の子孫はモスクワ大公国で貴族ヴャゼムスキー家として名を残しました。ヴャゼムスキー家からは、詩人でありプーシキンの親友であったピョートル・ヴャゼムスキー公爵や、フランスの女優・小説家であるアンヌ・ヴィアゼムスキーなどが出ています。

1494年、ヴャジマはモスクワ大公国に占領され、その要塞としての役割を担うことになります。現在も残るクレムリンのスパッスカヤ塔は、当時の面影を伝えています。また、ヴャジマには重要な修道院が二つ建設され、石造りの聖堂も建てられました。その中でも、「スモレンスクのオディギトリアの生神女」に捧げられた聖堂は、3つの尖塔が特徴的で、1638年に完成しました。この修道院には、1656年に遡る聖堂も存在します。さらに、街の大聖堂は1676年に献堂されました。これらの聖堂の多くはバロック様式で建てられています。

戦場としてのヴャジマ

ヴャジマは、その地理的な位置から、歴史的に何度も戦場となってきました。特に有名なのは、ナポレオンのロシア侵攻における1812年のヴャジマの戦いです。モスクワから撤退中のフランス軍37,000人と、ロシア軍25,000人がヴャジマ近郊で衝突しました。ミハイル・ミロラドヴィチ率いるロシア軍前衛と、マトヴェイ・パラトフ率いるコサック部隊が、ルイ＝ニコラ・ダヴー率いるフランス軍の後尾部隊を攻撃し、撤退路を遮断しました。ウジェーヌ・ド・ボアルネとユゼフ・ポニャトフスキの救援により、ダヴーの部隊は包囲を突破しましたが、フランス軍はヴャジマ近郊の高地とヴャジマ市を確保することができませんでした。10月22日の夕方までにロシア軍がヴャジマを陥落させ、フランス軍は火を放って退却しました。この戦いで、ロシア軍は2,000人の犠牲を出したのに対し、フランス軍は6,000人を失い、2,500人が捕虜となる大敗を喫しました。

第二次世界大戦（独ソ戦）においても、ヴャジマは再び戦場となりました。モスクワの戦いの最中、1941年10月7日にドイツ国防軍がヴャジマを占領しました。しかし、モスクワ近郊で踏みとどまった赤軍は反撃を開始し、激しい戦いの末に1943年3月12日にヴャジマを奪還しました。この戦いにより、街の大半が破壊され、戦後に再建されました。戦争前に6万人を数えた人口は716人にまで激減し、立っていた建物は僅か3つだけだったと言われています。

現在のヴャジマ

今日、ヴャジマは鉄道の結節点として重要な役割を担っています。モスクワ、サンクトペテルブルク、カルーガ、ブリャンスクからの路線が集中しており、交通の要所となっています。

ヴャジマは、その長い歴史の中で幾多の戦火を経験し、その度に復興を遂げてきました。その歴史的な背景と、戦略的な重要性から、ヴャジマはロシアの歴史において重要な位置を占める都市と言えるでしょう。

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