ヴラジーミル・タルノポルスキー

ヴラジーミル・グリゴリエヴィチ・タルノポルスキー

ヴラジーミル・グリゴリエヴィチ・タルノポルスキー（Влади́мир Григо́рьевич Тарнопо́льский、Vladimir Grigolyevich Tarnopolyskii、1955年4月30日 - ）は、現代ロシアを代表する作曲家の一人です。現在のウクライナ、ドニプロペトローウシク州にあたるドニプロに生まれ、ロシアの音楽界で重要な役割を果たしてきました。

生い立ちと教育

タルノポルスキーは、音楽教育の最高峰であるモスクワ音楽院で学びました。1973年から1978年まで在籍し、作曲をニコライ・シデルニコフに、器楽をエディソン・デニソフに、楽理をユーリー・ホローポフに師事しました。特に、エディソン・デニソフは、ソ連邦時代の非公式な現代音楽の重要な担い手であり、タルノポルスキーはその薫陶を受け、卒業後も同音楽院の研究科に進み、1980年に課程を修了しています。

ロシア現代音楽界での役割

タルノポルスキーは、ロシアの現代音楽シーンの発展に深く関わっています。1990年に現代音楽協会に入会しましたが、1991年のソビエト連邦崩壊は、多くの音楽家が西側へ活動拠点を移すという大きな変化をもたらしました。このような激動期の中、1996年に師であるエディソン・デニソフが死去し、協会は二つに分裂します。タルノポルスキーは、そのうちモスクワ音楽院を基盤とする「モスクワ現代音楽センター」（CCMM）の会長に就任し、ロシア国内における現代音楽の推進と普及において中心的な役割を担うことになりました。

教育活動

1992年以降、タルノポルスキーは母校であるモスクワ音楽院で作曲科の教授として後進の指導にあたっています。その教育手腕は高く評価されており、彼の門下からはオルガ・ラェーヴァ、セバスチャン・エキモフスキ=ヴィンクラー、フェリックス・プロフォスなど、国際的なコンクールで活躍する多くの才能ある作曲家が輩出されています。

作曲作品と評価

タルノポルスキーの作品は多岐にわたり、オペラ、交響曲、協奏曲、管弦楽曲、室内楽、声楽曲など、様々な編成のために作曲しています。1980年代後半からは、ロシア国内に留まらず、ヨーロッパやアメリカの主要な音楽祭やコンサートでも頻繁に作品が取り上げられるようになり、国際的な評価を確立しました。

彼の作品を演奏した著名な音楽家や楽団には、アレクサンドル・ラザレフ、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー、ヴァシリー・シナイスキー、ウラディーミル・ユロフスキ、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチといった指揮者や演奏家、そしてアンサンブル・アンテルコンタンポラン、アンサンブル・モデルン、バイエルン放送交響楽団などが挙げられます。これらの実績は、彼の作品が世界的に注目されていることを示しています。

また、タルノポルスキーは、ドミトリー・ショスタコーヴィチ賞（ロシア）やパウル・ヒンデミット賞（ドイツ）を含む、数多くの国際的な作曲賞を受賞しており、現代作曲家としてのその業績は広く認められています。

主な作品

以下に、タルノポルスキーの主な作品の一部をリストアップします。

オペラ
『The Three Graces』 (1988)
『Wenn die Zeit über die Ufer tritt』(1999)

交響曲
交響曲（1982）

協奏曲
チェロ協奏曲（1980）

その他
『パルティータ』（1972）
『カルパチア変奏曲』（1973）
ソプラノ、フルート、ヴィオラ、ハープのための 『The Piglet Sang』（1973）
ハープのための 『Hommage à Joan Miro』（1974）
フルート、オーボエ、クラリネット、バスーン、フレンチ・ホルン（1975）のための五重奏曲
ソプラノとピアノのための 『イタリアの歌』（1977）
オーケストラのための交響的序曲（1978）
合唱、ヴァイオリン、オルガン、パーカッションのための "Penitential Psalm"（1986年）
クラリネット、チェロ、ピアノのためのトリオ（1989年）
Tropezi Muzyki（1989）
Eindruck-Ausdruck（1989）
パーカッション四重奏曲（1990年）
大規模アンサンブルのための 『カサンドラ』（1991）
ソプラノ、2本のクラリネット、ヴィオラ、チェロとコントラバスのための«Amoretto»（1992）
クラリネット、バイオリン、ビオラ、チェロ、ピアノのためのトライアドインスタレーション。 『O, PÄRT — OP ART』（1992）
声とアンサンブルのための 『Chevengur』（2001）
ソプラノと室内合奏のための『Chevengur』（2001年）
児童合唱とオーケストラのための 『シンデレラ』（2003）
オーケストラのための 『Feux follets』（2003）
オーケストラのための 『Wandering lights』（2003）
オーケストラのための 『Foucault's Pendulum』（2004）
オーケストラのための 『振り子』（2004年）

ヴラジーミル・タルノポルスキーは、作曲、教育、そして組織運営という多様な面から、現代ロシア音楽の発展に貢献し続けている重要な人物です。

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