一乗院 (南さつま市)

一乗院について

一乗院は、現在の鹿児島県南さつま市坊津町坊（門前）に、かつて存在した真言宗の寺院です。如意珠山という山号を持ち、この地で長い歴史を刻んできました。現在、寺院の建物は残っていませんが、鹿児島県の指定史跡として、その存在が今に伝えられています。

歴史

寺伝によれば、一乗院は百済の僧侶である日羅によって建立されたとされています。しかし、その実在が明確になるのは南北朝時代からです。一乗院は、紀伊国根来寺の別院として、その後は京の仁和寺の別院として栄えました。

坊津は、古代から大陸との貿易港として重要な役割を果たしており、その地理的な重要性が一乗院の発展を支えたと考えられています。戦後の発掘調査では、一乗院の跡地から大量の中国陶磁器が出土しており、このことが一乗院が貿易に関与していた可能性を示唆しています。

江戸時代に入ると、一乗院は薩摩藩主である島津氏から手厚い保護を受け、藩内でも有数の有力寺院としての地位を確立しました。しかし、明治2年（1869年）の廃仏毀釈によって廃絶され、その歴史に幕を閉じました。その後、一乗院の跡地には坊泊小学校が開校し、学校の敷地として利用されていましたが、2013年（平成25年）に南さつま市立坊津学園が高太朗公園に移転したため、小学校も移転しました。

現在、一乗院跡地には仁王石像一対や歴代上人の墓などが残っています。特に上人の墓は「四角墓」と呼ばれる、石組みの井戸のような特殊な形式をしており、日本では珍しいものです。また、幸いにも難を逃れた寺宝の一部は、坊津歴史資料センター輝津館に所蔵され、一般公開されています。

エピソード

中世の興福寺では、大乗院と一乗院という二つの塔頭が勢力を競い合っていたことが有名です。偶然にも、薩摩藩においても、全く同じ名前の一乗院と大乗院という二つの寺院が、藩内で真言宗寺院の地位を競い合っていたという興味深いエピソードがあります。

関連情報

一乗院についてさらに詳しく知りたい方は、以下の情報を参照してください。

関連項目:
慈眼寺 (鹿児島市))
宝満寺 (志布志市))
龍巌寺 (南さつま市))
鹿児島県指定文化財一覧#史跡
参照資料:
西海金剛峯如意珠山龍厳寺一乗院 三国名勝図会 26巻 坊泊
外部リンク:
* 南さつま市観光協会 - Webサイト内に坊津歴史資料センター輝津館の情報があります。

もう一度検索