一宮浅間神社

一宮浅間神社

一宮浅間神社は、山梨県西八代郡市川三郷町高田に位置する神社です。古くは「一宮」や「一ノ宮明神」と称され、地元の人々に親しまれてきました。この神社は、延喜式神名帳にも記載される由緒ある古社であり、甲斐国の一宮としての歴史も持っています。

祭神

主祭神は、木花咲耶姫命（このはなのさくやひめのみこと）です。この神は、富士山の神としても知られ、美と繁栄を象徴するとされています。相殿神として、瓊瓊杵命（ににぎのみこと）と彦火火出見命（ひこほほでみのみこと）も祀られています。

歴史

社伝によると、一宮浅間神社の創建は景行天皇の時代に遡ります。864年（貞観6年）の富士山の大噴火を受け、その神意を慰めるために、翌年に勅命によって創建されたと伝えられています。当初は官社として扱われ、祝と祢宜が置かれていました。

この神社は、甲斐国の一宮として古くから重要な役割を果たしてきました。しかし、式内名神大社の「浅間神社」の比定については、笛吹市の浅間神社や富士河口湖町の浅間神社（河口浅間神社）が有力視されており、甲斐国一宮は一般的に笛吹市浅間神社とされています。そのため、一宮浅間神社は、かつての市川郷における一宮であったと考えられています。

また、一宮浅間神社の近くには「二の宮」と称される弓削神社が鎮座していますが、甲斐国の二宮は笛吹市の美和神社であるとされているため、これも同様に市川郷における二宮であったと推測されます。

貞観の創建は、富士山の神である木花咲耶姫命が、現鎮座地南方の御正体山に噴火の難を逃れるために遷ったことがきっかけとされています。その後、924年（延長2年）に、御正体山に対する里宮として現在の場所に移され、山上の旧跡には山宮として山祇社が祀られました。

『甲斐国社記・寺記』によれば、朝野の崇敬が厚く、度々社殿が造営されたことが記されています。また、神領地や社家も存在し、地域社会において重要な役割を果たしていたことが伺えます。

戦国時代には、武田氏が神社の神官を府中八幡社（現在の甲府市八幡神社）への勤番を命じていましたが、一宮浅間神社の祢宜もその中に含まれていました。その後、徳川家康が甲斐に入国した際に、兵乱で社領が没収され一時的に荒廃しましたが、後に再興されました。

江戸時代には、徳川幕府から朱印領が与えられ、社領や神官の屋敷が保護されました。また、後陽成天皇の皇子である良純法親王もこの地を訪れ、神社を崇敬したと伝えられています。明治時代に入ると、村社に列せられました。

境内

本殿は1703年（元禄16年）に造替されたもので、三間社流造の銅板葺です。拝殿は桁行5間梁間3間入母屋造平入瓦葺で、両下造の通廊で本殿と繋がっています。

境内には、摂末社として、1854年（安政元年）の大地震の際に被災者の救済に尽力した代官と名主を祀った生祠などがあります。また、かつては近隣の神社も摂社としていたと伝えられています。

祭事

例祭は11月3日に行われます。かつては、御正体山からの神輿渡御がありましたが、現在では行われていません。武田氏時代には田祭が盛んに行われ、神輿の渡御や騎馬揃えが行われたと伝えられています。

文化財

一宮浅間神社には、貴重な文化財が所蔵されています。

重要文化財（国指定）

神獣鏡1面
1894年（明治27年）に古墳から出土した四神四獣鏡で、銘文には「赤烏元年」とあり、日本の紀年銘鏡の中で最古のものとして貴重です。この鏡は、当時日本（倭）と中国の呉との間に交流があった可能性を示唆する遺品として、非常に重要な意味を持っています。

山梨県指定文化財

銅鏡1面
神獣鏡と共に発掘された仿製の青銅鏡です。素文の平縁で櫛歯文を2重に巡らせた特徴的な鏡です。

その他

随神像2躯
武官束帯姿の寄木造彩色像で、室町時代の作とされています。山梨県下の中世作品としては貴重なものです。
一宮浅間宮帳
江戸時代の年代記で、甲斐国における洪水復旧工事に関する記述が含まれています。

現地情報

所在地: 山梨県西八代郡市川三郷町高田字宮本3696
交通アクセス: 最寄駅はJR身延線市川大門駅で、徒歩約12分です。

一宮浅間神社は、歴史と文化が息づく場所として、多くの人々にとって大切な存在です。訪れた際には、その歴史に触れ、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

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