一条長成

一条長成：平家物語を彩る影の立役者

一条長成は、平安時代後期に活躍した貴族です。藤原北家中関白家出身の父・藤原忠能をもち、正四位下・大蔵卿という高位に上り詰めました。邸宅が一条大路沿いにあったことから、「一条大蔵卿」と呼ばれたと伝えられています。

史料によると、久安5年（1149年）には従五位上・右兵衛佐に任命され、美福門院御所への昇殿を許されています。その後も順調に昇進を重ね、仁平2年（1152年）には従四位下加賀守、同年末には但馬守に任ぜられました。保元2年（1157年）には大蔵卿に任ぜられ、正四位下に叙せられます。

興味深いのは、彼の私生活です。晩年まで子供に恵まれなかった長成でしたが、源義朝の側室であった常盤御前との間に、嫡男・能成と一人の娘をもうけました。この能成は、義経の側近として活躍し、後に従三位にまで昇進しています。長成自身は、大蔵卿の地位にありながらも公卿には至らず、その生涯を終えました。『尊卑分脈』には皇后宮亮を務めたと記されています。

一条長成は、藤原北家道隆流（水無瀬流）に属しますが、後の摂関家一条家とは異なる系統です。同時代の権中納言・一条能保（中御門流、源頼朝の妹婿）や、一条忠頼（甲斐源氏）とも血縁関係はありませんでした。

長成は、義経の生涯にも深く関わっていたとされています。幼少期の義経が、奥州の藤原秀衡の庇護を受けたのは、長成の支援があったからだと伝えられています。秀衡の舅である藤原基成や、平治の乱の首謀者である藤原信頼は、長成の母方の従兄弟にあたる藤原忠隆の子であり、長成とは親戚関係にあったのです。この親戚関係が、義経の庇護に繋がった可能性が高いと考えられています。

一条長成の生涯は、華々しい昇進とは裏腹に、公卿にはなれなかったという複雑さを持ち合わせています。しかし、義経という歴史上重要な人物との繋がり、そして歌舞伎の演目『鬼一法眼三略巻』の第四段『一条大倉卿譚』の主人公として描かれていることなどから、平安時代後期の政治・社会を理解する上で、重要な人物と言えるでしょう。彼の存在は、源平合戦という激動の時代を生き抜いた、影の立役者として、歴史に刻まれています。

系譜

父：藤原忠能（白河院・鳥羽院の院近臣）
母：藤原長忠の娘（藤原北家中御門流出身）
妻：常盤御前
男子：一条能成（1163-1238）
女子：1名（名前不明）
生母不明の子女
男子：藤原長信
養子：源義経（源義朝の九男）

関連作品

映画『源義経』（1955年、東映）
テレビドラマ『源義経』（1966年、NHK大河ドラマ）
テレビドラマ『草燃える』（1979年、NHK大河ドラマ）
テレビドラマ『炎立つ』（1993-1994年、NHK大河ドラマ）
* テレビドラマ『義経』（2005年、NHK大河ドラマ）

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