一萬田氏

一萬田氏（いちまだし）

一萬田氏は、豊後国（現在の大分県）を本拠とした日本の氏族です。特に著名なのは、戦国大名・大友氏の庶家として栄えた一族で、鎌倉時代から戦国時代にかけて、大友氏の御紋衆を務めました。居城は、大野郡一萬田村にあった小牟礼城とその支城である鳥屋城でした。

概要

一萬田氏は、大友能直の三男・大友時景（景直）を祖とします。時景が一萬田村に土着し、一萬田姓を名乗ったのが始まりです。時景は延応2年/仁治元年（1240年）頃に鳥屋城を築城し、以後約400年にわたってこの地を治めました。

天正時代、薩摩藩の島津氏が大友氏の領土へ侵攻した際（天正の戦い）、一萬田氏は島津氏に寝返りました。これにより、後に大友宗麟から切腹を命じられるという悲劇に見舞われます。宗像鎮統が城を継承しましたが、天正20年/文禄元年（1593年）に廃城となり、鎮統自身も慶長5年（1600年）の石垣原の戦いで大友軍の一員として討ち死にしました。

しかし、一萬田氏の支流や末流はその後も存続し、第二次世界大戦後（昭和20-30年代）の金融界・経済界で重要な役割を果たした一万田尚登は、その末裔にあたります。

家紋

一萬田氏の家紋は、日本最古の家紋集『見聞諸家紋』に大友豊後守親繁の杏葉として登録されている抱き花杏葉紋です。

著名な人物

一萬田時景: 大友能直の六男で、大野郡一萬田村を領し、一萬田氏の家祖となりました。小牟礼城を築いたとされています。
一萬田鑑実: 兵部大輔として大友氏に仕えましたが、後に大友宗麟に自刃を命じられました。
一万田尚登: 日本銀行総裁（第18代）、大蔵大臣（第58・59・60・63代）、衆議院議員（5期）などを歴任しました。日銀総裁としての在任期間は歴代最長であり、「法王」の異名を持ち、戦後の金融界・経済界に大きな影響を与えました。国際基督教大学（ICU）の設立にあたり、仏教徒でありながら募金運動を主導し、多大な貢献をしました。

系譜

大友能直
風早禅尼深妙 - 畠山重能の娘
（長男大友親秀 、二男大友能秀、四男大友能郷 、五男大友泰広）
三男大友時景（景直） - 一萬田太郎。豊前城井景房（宇都宮景房）の養子となる。大和守。鳥屋城。
一萬田光景 - 兵衛太郎。一萬田氏を家号とする。法名孔釈。
宣景
宣政
真政
貞直
貞政
直弘
直政 - 治部大輔
家泰 - 治部大輔
直泰（有泰） - 左京大夫
常泰
長泰
一萬田親泰
一萬田親実（鑑相） - 禅正忠。大友宗麟による討伐で死亡
一萬田鑑実 - 兵部大輔。大友宗麟に自刃を命じられ死亡
一萬田鎮実 - 民部大輔。大友義統に自刃を命じられ死亡
妻 - 大友宗麟娘
一萬田統政 - 大友義統に自刃を命じられ死亡
一萬田親宗 （高橋鑑種）- 三河守。右馬之助。大蔵氏の大蔵春実高橋を祖とする高橋長種の後に高橋の名跡を継いだ。
一萬田鑑久
一萬田英政
一萬田親貞
一萬田頼顕

史跡

大分県豊後大野市朝地町には、「一萬田氏館跡」があります。国道57号沿いの市万田川と向原川に挟まれた場所に位置し、標高276メートルです。付近には朝倉文夫記念館があります。

参考文献

「一万田氏」 - 播磨屋『戦国武将の家紋』
田北學『續編年大友史料 : 併大分縣古文書全集 巻10』二豊文化ブースティング・センター、大分県、1959年。「七 大友一萬田氏系圖 新撰事蹟通考本」
太田亮 著『姓氏家系大辞典』 第1巻、姓氏家系大辞典刊行会、1934年、1238-1251頁。
国書刊行会 編『系図綜覧. 第二』国書刊行会刊行書、1915年。
堀田正敦 編『寛政重修諸家譜』。
日本の名字七千傑
武家家伝
世界帝王事典

関連項目

賀来の騒動
一万田勘解由

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