七大貴族

七大貴族：サーサーン朝を支えた名門たち

七大貴族とは、サーサーン朝時代に大きな影響力を持った有力な貴族層を指す言葉です。彼らの多くは、アルシャク朝（パルティア）時代にまで起源を遡るとされています。サーサーン朝の研究においては重要なテーマとされていますが、常に用いられる用語ではありません。

「7」という数字の重要性

「7」という数字は、古代インド・イラン文化において特別な意味を持っていました。ゾロアスター教の伝承にも頻繁に登場し、世界の構造や神々の創造行為と深く結びついています。例えば、『アヴェスター』は7つの章からなる3つのグループで構成され、世界は人間界とそれを囲む6つの領域、合わせて7つの部分からなると考えられていました。サーサーン朝の創始者であるアルダシール1世が城を攻略した際にも、7人の有力者が同行していたと伝えられています。

七大貴族の定義

七大貴族は、カイ・ヴィシュタースプ王によって7つの邦の領主として定められたと伝えられています。しかし、具体的にどの家系が七大貴族に該当するかは明確ではありません。『エンサイクロペディア・イラニカ』では、以下の7つの家系が挙げられています。

スーレーン (Surēn/Sūren)
カーレーン (Kāren/Karin)
ジーク (Zig/Zīk)
ミフラーン (Mehrān/Mihrān)
アスパーフバド (Spahbad/Ispahbudhān)
スパンディアード (Spandiād/Spandīyādh) または イスファンディヤール (Isfandīyār)
* ナハーバド (Nahābad)

ただし、史料に登場する「大貴族」が必ずしもこのリストと一致するわけではなく、また、全ての家系が常に同程度の権力を持っていたわけでもありません。

アルシャク朝との繋がり

七大貴族の多くは、その起源をアルシャク朝時代に遡るとされています。しかし、アルシャク朝時代の記録に確実に登場するのは、スーレーン家とカーレーン家のみです。プルタルコスによれば、スーレーン家の者は貴族の中で最も位が高く、アルシャク朝の戴冠式で王に王冠を授ける特権を持っていました。タキトゥスは、カーレーン家の人物がパルティア軍の司令官の一人であったことを記録しています。

アルシャク朝後期には、スーレーン家、カーレーン家、アスパーフバド家の3家が特に有力であったと考えられています。これらの家系は「パフラヴィー」または「パルティア人」という称号を帯びていました。

サーサーン朝における役割

サーサーン朝の初期の王の碑文には、「ウズルガーン」と呼ばれる貴族階級が登場します。その中でも、ヴァラーズ家、スーレーン家、カーレーン家の3家が最上位に位置づけられていました。後世の史料では、スパンディアード家とミフラーン家もこのリストに加えられています。

ミフラーン家は、ヤズデギルド2世の宰相ミフル・ナルセや、将軍バフラーム・チョービン、簒奪者シャフルバラーズを輩出しています。彼らは、自らの家系の由緒正しさを強調するために、より古い時代に遡る系譜を作成したと考えられています。

これらの大貴族は広大な所領を所有し、カーレーン家はニハーヴァンド地域、スーレーン家はシースターン、アスパーフバド家はディヒスターンとゴルガーンに居住していました。彼らはサーサーン朝の建国後も自律性を維持し、国家機構に組み込まれました。サーサーン朝後期には、帝国の東西南北に配置された軍司令官（スパーフベド）の地位も、これらの家系の出身者が占めていました。

七大貴族は、サーサーン朝の政治、軍事、社会において重要な役割を果たし、その繁栄を支えたと言えるでしょう。

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