三井住友銀行大阪本店ビル

三井住友銀行大阪本店ビル：住友グループの歴史を刻む建築物

大阪市中央区北浜にそびえ立つ三井住友銀行大阪本店ビルは、単なる銀行ビル以上の存在感を持ちます。その歴史は、旧住友財閥、現在の住友グループの隆盛と深く結びついており、かつては住友銀行本店ビル、そして住友ビルディングとして親しまれてきました。

住友グループ各社の本社が集中する北浜エリアは「住友村」と呼ばれ、その中心に位置する本ビルは、住友グループの歴史を象徴するランドマーク的存在です。住友家の事業は江戸時代以前、慶長年間の京都に始まり、1623年(元和9年）に大阪に移転。長堀（鰻谷）で銅の加工を家業として発展を遂げました。幕末から明治にかけての激動期においても、別子銅山の近代化などを通して難局を乗り越え、大阪を代表する企業へと成長しました。しかしながら、家訓である「浮利は追わず」の精神から、銀行業への進出は遅れていました。

1885年（明治28年）、住友銀行が設立され、1920年（大正9年）には北浜に新たな本店ビルの建設計画が具体化します。それ以前は、1908年築の2階建て洋館を本店としていましたが、第一次世界大戦後の急激な業務拡大に対応できなくなり、新ビルの建設が決定されました。

十五代当主・住友吉左衞門友純は、住友本店内に設計部門を設け、野口孫市、日高胖、長谷部鋭吉、竹腰健造ら一流の建築家と大林組という名工を迎え、建築が始まりました。当初は7階建ての計画でしたが、1923年の関東大震災を受けて設計変更。防災、避難を最優先した6階建ての堅牢な建物となりました。耐火耐震構造を徹底し、1階と2階を住友銀行と住友信託が使用し、その他階には住友合資会社や関連企業が入居、6階には食堂が設けられました。

1926年（大正15年）4月、第一期工事が完了し、1930年（昭和5年）7月には第二期工事が完了して住友ビルディングが完成しました。終戦直後には、連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) に接収される事態にも遭遇しますが、住友側の粘り強い交渉により、一部階のみの接収で済みました。

昭和30年代に入ると、ビルの老朽化と入居企業の拡大により、隣接地に新ビル「新住友ビルディング」（現在の住友ビルディング）が建設され1962年に竣工。これにより、旧ビルは住友銀行の単独所有となり、大規模な改修工事が行われました。1982年（昭和57年）7月には「住友銀行本店ビル」と名称変更され、2001年（平成13年）4月のさくら銀行との合併後は現在の名称となりました。

2000年代後半には、耐震性の向上や空間の有効活用を目指し、約50年ぶりの大規模改修が行われました。建て替え案なども検討されましたが、歴史的価値や耐震性の高さから、建物を維持する方向で決定。2015年までに改修工事が完了し、耐震性能の強化、防潮対策、そして建設当初からあった天井のステンドグラスを生かした待合室の新設などが行われました。

建物の意匠は、近世復興様式を踏襲した重厚な造り。黄土色の竜山石を用いたファサード、小さく配置された窓、イオニア式オーダーやアーチ窓など、細部にまでこだわった設計となっています。銀行営業室の内装は、磨き上げたトラバーチンによるコリント式オーダーや黒大理石のカウンター、幾何学的な天井装飾など、シンプルな外観とは対照的な華麗さを備えています。

1999年（平成11年）には、「DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築」の20選に選ばれ、「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」にも選定されるなど、その建築的価値は高く評価されています。三井住友銀行大阪本店ビルは、歴史、建築、そして住友グループの精神が凝縮された、大阪を代表する建造物と言えるでしょう。

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