三人奴

三人奴（さんにんやっこ）

三人奴は、昭和時代に活躍した三味線を用いた音曲漫才トリオです。同名のトリオ「松葉家奴・松葉家喜久奴」との混同を避けるため、この名が付けられました。人気が出るまでは、「塚本やっこ・市松笑顔・市松笑美子」と表記されていました。

メンバー

塚本やっこ（つかもと やっこ）：初代リーダー。本名：塚本利夫。1914年7月13日 - 1987年1月20日。大阪府東淀川区出身。出っ歯が特徴で、立ち位置は中央。
市松笑顔（いちまつ えがお）：本名：塚本ソデ子。1916年11月3日 - 2004年3月25日。長崎県島原市出身。やっこの妻。義太夫の三日月太郎を父に持ち、島原で少女歌舞伎の座長を務めました。三味線、義太夫、太鼓、あやつり人形など様々な芸を習得後、漫才に転向。天狗いちま、出雲小ろく、砂川女捨丸、市松笑美子、市松笑がほと改名。戦時中は慰問団を結成し、北海道、台湾、中国などを巡業しました。立ち位置は向かって右。
市松笑美子（いちまつ えみこ）：本名：松本年恵。1928年3月4日 - 1999年1月1日。笑顔の妹。9歳で歌舞伎ナンセンス一座にて初舞台を踏み、あやつり人形を担当していました。当初は市松南笑顔と名乗り、後に姉の名を襲名。立ち位置は向かって左。
塚本小やっこ（つかもと こやっこ）：二代目リーダー。本名：塚本利一。1950年7月4日 - 。元「塚本冷奴」。やっこと笑顔の息子。立ち位置は向かって右、後に中央。

概説

初代リーダー・塚本やっこの父は俄の塚本百合春であり、幼少の頃から芸事に親しんでいました。1921年に安来節の一座に入り、大阪松島中島席で初舞台。1924年には歌舞伎ナンセンス一座に移り、南長二郎の名で活躍しました。1939年、三日月太郎の一座で市松笑顔と出会い結婚。後に東京の浅草でコンビを結成しました。一時新興キネマの演芸部に所属しましたが、すぐに解散。1950年、大阪で笑顔の妹である笑美子を迎え、「三人奴」を正式に結成し、戎橋松竹でデビューしました。

テーマソングには、市丸の「三味線ブギー」を編曲したものが使用されました。

同世代の暁伸・ミスハワイ、タイヘイトリオ、宮川左近ショー、芙蓉愛花・松島洋子、フラワーショウ、東洋朝日丸・日出丸、ジョウサンズなど、浪曲出身の音曲漫才コンビ・トリオが上方演芸界を席巻する中、三人奴は義太夫節を下敷きにした、文楽を題材とした独自の音曲漫才を展開しました。

リーダーの塚本やっこは浄瑠璃に使う太棹（三味線）を、市松笑顔は細棹を使用し、味のある歌声を披露しました。当初、やっこは太棹をギターのように肩から提げて演奏していましたが、下座お囃子方の林家とみ（2代目林家染丸の妻）から注意を受け、以後手持ちで演奏するようになりました。小やっこも父のスタイルを受け継いでいます。

当初は千土地系（日本ドリーム観光）の劇場や神戸国際会館などに出演していましたが、1967年より吉本興業に所属し、なんば花月などで活躍しました。

持ちネタには、「阿波の鳴門」、「堀川～お俊伝兵衛」（最後にやっこが猿回しの猿の真似をする）、「野崎村」、「松づくし」（松の絵が描かれた扇子を広げる芸）、「葛の葉の曲書き・障子抜け」（義太夫「蘆屋道満大内鑑」に合わせて文字を書く珍芸）、笑美子の「八百屋お七」の人形振り、「櫓太鼓」、「のんき節」などがありました。ナンセンストリオで有名になった「親亀の上に小亀を乗せて…」というコミックソングは、元は三人奴のネタでした。また、やっこは手拭いや紙吹雪などの小道具も使用しました。

1974年には第9回上方漫才大賞を受賞。その後、やっこ・笑顔の実子である塚本冷奴を加え、一時「四人奴」（よにんやっこ）となりましたが、1981年11月にやっこの糖尿病による引退に伴い、翌1982年1月に冷奴改め塚本小やっこがリーダーとなり、新生三人奴として再出発しました。この頃から、芸風は浄瑠璃色よりも歌謡曲主体へと変化。晩年には、テレビ用のネタとしてSMAPの曲を取り入れるなど、若者向けの構成を取り入れました。

1999年に笑美子が死去、続いて笑顔が引退し、三人奴は解散。笑顔は2004年に老衰で亡くなりました。その後、小やっこは女性の弟子2人と新トリオ「奴組」を結成しましたが、2002年1月に弟子の呉羽とコンビを組み直し、「小やっこ・呉羽」として三味線漫才を続けています。

もう一度検索