三國志 (ゲーム)

三國志（1985年）

『三國志』（さんごくし）は、1985年12月10日に光栄（現コーエーテクモゲームス）から発売されたPC-8801/mkII用歴史シミュレーションゲームです。同社の『三國志シリーズ』の記念すべき第1作目であり、中国の歴史小説『三国志演義』を題材としています。

ゲーム概要

プレイヤーは三国時代の君主となり、関羽や諸葛亮といった有名な武将を配下に、中国全土の統一を目指します。このゲームは、光栄の別の人気シリーズである『信長の野望』シリーズとは異なり、空白地の概念や配下武将の能力値、忠誠度、兵士の管理といった要素が特徴です。これらの要素が、ゲームに戦略性と深みを与え、プレイヤーは内政と戦争の両面でバランスの取れた戦略を立てる必要がありました。

コンピュータの思考ルーチンは「好戦的」と「理知的」の2種類から選択でき、プレイスタイルに応じてAIの行動が変化します。

開発背景

三国志をゲーム化するにあたり、当時の社会背景として、吉川英治の小説『三国志』、横山光輝の漫画『三国志』、そしてNHKで放映されていた『人形劇 三国志』など、三国志ブームが追い風となりました。開発当初、ゲームデザイナーは『信長の野望』をベースに構想をまとめましたが、データ量が膨大になったため一時開発が凍結されました。その後、1985年に開発が再開され、発売に至りました。

ちなみに、開発者は三国志以外にも水滸伝、西遊記、金瓶梅を題材にした中国歴史ゲームのリリースを構想しており、実際に水滸伝をモチーフとした『水滸伝・天命の誓い』や『西遊記』が発売されています。

ゲームタイトルとデザイン

題字は中国の書家である徐伯清氏によって書かれました。また、同名の書籍等との混同を避けるため、ゲームタイトルは「三国志」ではなく「三國志」と表記されています。

ゲーム内容

武将の能力値

知力: 内政、計略、外交、探索などに関わる能力。諸葛亮が最高の100。軍師として助言を行う際にも重要な要素となります。後のシリーズでは知力と政治力に分化。
武力: 軍事全般に関わる能力。呂布が最高の100。戦闘で敵部隊を全滅させることで上昇します。後のシリーズでは武力と統率力に分化。
カリスマ: 武将の忠誠度、民忠誠度、人材登用の成否などに関わる能力。曹操が最高の100。後のシリーズでの魅力にあたる。君主のみが上昇・下降可能。
身体: 武将の健康状態を表す。寿命を過ぎると毎年低下し、値が低いほど死亡の危険性が高まる。
運勢: 武将の運の良さを表す。司馬昭が最高の100。上昇も下降も不可。
経験: 武将がコマンドを実行する度に上昇。内政や探索の結果に影響。
水軍: 水上での移動能力の有無。
兵士忠誠度（兵忠）: 武将が率いる兵士の忠誠度。高いほど部隊機動力が向上。
兵士武装度: 武将が率いる兵士の武装度。高いほど部隊攻撃力が向上。鉄を産出する国で鍛冶屋と取引することで上昇。
兵士能力（兵能力）: 武将が率いる兵士の訓練度。高いほど部隊機動力が向上。
忠誠度: 武将の君主に対する忠誠心。高いほど裏切りにくくなる。
年齢: 武将の年齢。毎年1歳加算。

これらの能力値はゲームプレイに深く関わり、武将の配置や戦略を考える上で重要な要素となりました。

戦闘

戦闘は最大10対10の部隊で行われ、城の占拠や敵部隊の全滅、総大将の討伐で勝利が決まります。また、兵糧切れも敗北条件となります。このゲームでは、武力の高い武将に訓練された兵士を与えることで、非常に強力な部隊を編成することができました。

特に、知力の高い武将による火計は強力で、敵部隊を焼き払うことが可能です。しかし、火計は味方にも影響するため、慎重な運用が求められます。

戦闘以外の勢力拡大手段として、他国の太守の引き抜きや外交交渉も存在します。

その他

人材登用: 三顧の礼、赤兎馬、貂蝉をモチーフにしたコマンドが存在。
外交: 贈物、婚姻、借金、兵糧借りの他に「土地の要求」「土地の交換」といった独自の交渉要素が存在。
略奪: 金や兵糧を入手できるが、民忠やカリスマが低下。美女の入手方法でもある。
放浪: 自国を放棄し、新たな旗揚げ地へ移動する機能。
玉璽: 人材登用成功率を上げたり、配下武将の裏切りを防止するアイテム。

シナリオ

ゲームには複数のシナリオが存在し、それぞれ開始年や勝利条件、登場する君主が異なります。

1. 董卓打倒 (189年)
2. 曹操の台頭 (195年)
3. 新時代の幕開け (201年)
4. 孔明の出廬 (208年)
5. 三国の時代 (215年)

評価と影響

本作は、当時としては高価なソフトであったにもかかわらず、多くの売り上げを達成し、三国志ブームの牽引役となりました。ゲームシステムやグラフィック、音楽の質の高さが評価され、後のシリーズに大きな影響を与えました。特に、ファミリーコンピュータ版は移植にあたり、多くの要素が修正・削除されましたが、独自の要素も追加され、人気を博しました。

各機種版の特徴

PC版: 初期のスタンダード版。機種によってBGMが演奏されないことも。
抄本三國志: 初心者向けにコマンドを削減した簡易版。
PC-9801, 他: グラフィックやBGMが強化された改良版。
ファミリーコンピュータ版: コマンドの削減や独自の調整が施されたバージョン。
X68000版: 当時最高水準のグラフィックとサウンドを搭載した豪華版。
復刻版: PC-9801版をエミュレータで動作させたもの。
スーパー三國志: スーパーファミコン版。PC版がベースで一騎打ちモードが存在。
三國志リターンズ: 初代のリメイク版で、グラフィックがポリゴン化。
Mobile三國志: 携帯ゲーム機用リメイク。一部コマンドが割愛。
* 三國志 TOUCH: リメイク版。難易度や寿命の選択、ifシナリオが追加。

音楽

菅野よう子が担当。後に『信長の野望・全国版』でも楽曲を手掛けています。サウンドトラックも複数発売されています。

まとめ

『三國志』は、歴史シミュレーションゲームの金字塔として、今もなお多くのファンに愛されています。その戦略性、自由度の高さ、そして三国志の世界観を忠実に再現した点が評価されています。後のシリーズの基礎となったこの作品は、歴史ゲームファンにとって必携の作品です。

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