三村氏

三村氏（みむらし）

三村氏は、日本の氏族であり、その本姓は源氏です。清和[[源氏]]の一流である河内源氏の傍流、甲斐源氏小笠原氏の庶流にあたります。鎌倉時代から江戸時代にかけて、常陸、信濃、備中、備後、豊前などに分布し、一貫して「親（ちか）」を通字としていました。

概要

三村氏は、大きく分けて以下の系統があります。

備中三村氏: 備中を支配した戦国大名で、特に著名です。信濃三村氏の庶流にあたります。
信濃三村氏: 清和[[源氏]]小笠原氏の流れを汲み、備中三村氏の元となる系統です。
常陸三村氏: 常陸国に分布した三村氏で、その出自は備中・信濃の三村氏とも関連があります。

歴史

鎌倉時代前期（発祥期～備中西遷）

三村氏の歴史は、少なくとも鎌倉時代初期まで遡ることができます。元々は常陸国筑波郡三村郷の開発領主、またはその縁者であったと考えられ、当初は鎌倉幕府の一御家人に過ぎませんでした。『吾妻鏡』には、1238年に将軍藤原頼経の上洛に随兵した三村親泰や、1251年と1254年の椀飯行事で御馬を曳いた三村時親など、「親」を通字とする三村氏の人物が複数確認できます。

当時、足利氏や畠山氏といった有力御家人がいた中で、三村氏は目立つ存在ではありませんでしたが、北条氏との姻戚関係を持たなかったことが、北条氏による有力御家人排斥の圧力から逃れ、命脈を保つ要因になったと考えられます。

伝承によれば、小笠原長経の三男である長時が筑波郡三村郷に移り住み、その子・親時の代から三村氏を称したとされています。また、長時の叔父である小田清家が三村郷にいたことも、長時が三村郷と縁を持つきっかけになったと言われています。

長時の子孫は、承久の乱後に信濃国筑摩郡洗馬荘の地頭となり（信濃三村氏）、後庁氏などの分流を派生させながら、小笠原氏や武田氏の家臣として信濃を中心に活動しました。

その信濃三村氏の一流が、鎌倉時代後期までに備中星田郷の地頭となり移住したことが、備中三村氏の始まりとなります。これは、西遷御家人と呼ばれる動きの一環です。

鎌倉後期～戦国期

移住後、備中三村氏は長らく星田郷や成羽を支配する一豪族に過ぎませんでした。しかし、16世紀前半、三村宗親が分流の石蟹氏などと対立しながらも勢力を拡大し、その子・家親の時代には、毛利氏の支援を得て備中をほぼ統一し、備前や美作にも勢力を広げ、戦国大名として名を馳せました。

その後、家親はさらなる勢力拡大を目指しましたが、1566年、宇喜多直家によって暗殺されます。家親の死後、一時衰退するも勢力を盛り返しますが、1575年、毛利氏と宇喜多氏が同盟関係を結んだことがきっかけとなった備中兵乱で、毛利氏に攻められ、家親の子・元親が自害し、戦国大名としての三村氏は滅亡しました。

元親の血筋に近い者は、毛利方についた三村親成などを除き、各地に落ち延びました。

江戸期

親成の系統は、水野勝成との縁故から備後福山藩の家老職を務めました。その他、備前岡山藩に仕官した系統などもありました。

上田実親の遺児である三村勝親と吉親のうち、勝親の系統は讃岐高松藩士となり、吉親の系統は幕末に備中松山藩士・三島中洲家となりました。その他にも、江戸時代には藩士として禄を食んでいた三村氏の子孫が複数いました。

備中・信濃両三村氏の関係

備中三村氏と信濃三村氏の関係については、不明とする文献もありますが、両氏が(1)家紋、(2)通字、(3)地名、(4)伝承、(5)同族認識、を共有していることから、同流同族であると結論づけられます。また、家親が信濃から神社を勧請していることからも、信濃との深い繋がりがうかがえます。

系譜

　　源義清
　┏┻━━━━━━━━━━━━┓
加賀美遠光 　　　　　 　武田清光　　　　　　　　　
　┃ 　
小笠原長清
　┣━━━━━━┳━━━━━━┓
小笠原長経 　伴野時長 　大井朝光
　┣━━━━━━┓　　　　　　
小笠原長忠 小笠原(三村)長時(住常陸国筑波郡三村郷)　　　　　
┃　
三村親時
　　　　　　　　┃　
親屯(信濃国筑摩郡洗馬郷)
　　　　　　　　┃　
親實(備中国小田郡星田郷)
　　　　　　　 ┃　　　　　　
能實
　　　　　　　 ┃　　　　　　　　　　
親経
　　　　　　　 ┃　　　　　　　　　　　
親基
　　　　　　 　 ┃　　
親隆
┃
時親
┃　　
宗親　 　
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━┓
　　 　　 家親 　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　親成　　 　 　 　 　親頼
┏━━━┳━━┻┳━━━┳━━━┳━━━┓　　　　　　　　　　（備後水野福山藩家老家祖）
庄元資　 元親　 元範　上田實親　元高　　於柵(水野勝成正室)

その他の三村氏

南北朝時代には、新田義貞の叔父である新田俊信の子孫が三村氏を名乗った例があります。また、常陸国にも三村氏が存在し、佐竹氏や大掾氏の家臣として活躍しました。秋田藩士にも三村氏が見られ、水戸藩には天狗党の乱に関与した義民として三村氏の名が残っています。

脚注

参考文献

明田鉄男編『幕末維新全殉難者名鑑1』（新人物往来社、1986年）ISBN 4404013353
秋田県公文書館編『系図目録I (PDF) 』(秋田県、2001年)
大内政之介著『新編金砂戦国史』（筑波書林、1993年）
* 太田亮著、上田萬年、三上参次監修『姓氏家系大辞典 第3巻』（角川書店、1934年）

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