加賀美遠光

加賀美遠光について

加賀美遠光（かがみ とおみつ）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての武将で、甲斐源氏の祖である源義光の子、義清の四男として生まれました。ただし、兄の清光の子とする説もあり、実際には猶子であったとも言われています。彼は加賀美氏の初代であり、武田氏初代の武田信義の叔父、あるいは義弟にあたります。本拠地は甲斐国巨麻郡加賀美郷、現在の山梨県南アルプス市の一部にあたる加々美荘でした。

生涯

保元2年（1157年）、15歳で元服し、同族の新田義重によって加冠されました。伝承によれば、承安元年（1171年）には宮中で怪異が発生し、高倉天皇は源氏の弓矢の名手として遠光を召し出しました。当時、遠光は滝口武者であったとされ、鳴弦の術を行ったところ、怪異は鎮まったとされています。その功績により、遠光は褒賞として不動明王像と近江国志賀郡を与えられました。現在、この不動明王像は山梨県南巨摩郡身延町の大聖寺に安置されており、国の重要文化財に指定されています。さらに、遠光は特別に「王」の一字を許され、加賀美氏の家紋は三階菱の中に「王」の字を配するようになりました。

治承・寿永の乱では、次男の小笠原長清と共に源氏方として参戦し、平家滅亡後の文治元年（1185年）には源頼朝から御門葉の一人として重用され、信濃守に任じられました。その後は頼朝の家臣として活躍し、『吾妻鏡』にもその記述がしばしば見られます。

晩年には、衰微していた真言宗の古刹である法善寺を再興し、また、現在の甲府市伊勢に所在する遠光寺（当時は臨済宗、現在は日蓮宗）を創建しました。その他にも、遠光が創建したと伝わる寺社が数多く存在します。

遠光には5人の息子がおり、それぞれが歴史に名を残しています。長男の秋山光朝は加々美荘から南の大井荘に進出し、現在の南アルプス市秋山に居館を構え、秋山氏の祖となりました。彼は平家嫡流の平重盛の娘を妻としていたため、頼朝に滅ぼされましたが、その一族の活動は記録に残っています。次男の小笠原長清は小笠原氏の祖となり、三男の南部光行は南部氏の祖となりました。四男の光経が加賀美氏を継ぎ、五男の於曽光俊（経行）は奥州合戦で軍略の才能を発揮しました。また、娘の大弐局は頼朝の子である頼家と実朝の養育係を務めました。

しかし、鎌倉では弘安8年（1285年）に安達泰盛・宗景父子が誅殺された霜月騒動が起こり、この騒動に小笠原氏、秋山氏、南部氏といった加賀美一族が連座しました。これにより、在地での加賀美一族は衰退し、戦国時代には甲斐守護である武田氏の一族、武田大井氏が台頭することになります。

加賀美遠光と関連する人々

新田義重: 遠光の元服時に加冠を務めた。
高倉天皇: 怪異を鎮めるため遠光を召し出した。
源頼朝: 遠光を重用し、信濃守に任じた。
秋山光朝: 遠光の長男で、秋山氏の祖。
小笠原長清: 遠光の次男で、小笠原氏の祖。
南部光行: 遠光の三男で、南部氏の祖。
* 大弐局: 遠光の娘で、頼家と実朝の養育係。

まとめ

加賀美遠光は、平安末期から鎌倉初期にかけて活躍した武将であり、その生涯は多くの伝説や歴史的な出来事に彩られています。彼は加賀美氏の初代としてだけでなく、武田氏、小笠原氏、南部氏といった後世に大きな影響を与えた一族の祖としても重要な人物です。

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