三田大講堂

三田大講堂：慶應義塾の象徴的な大ホール

三田大講堂は、かつて慶應義塾大学三田キャンパスに存在した、ゴシック様式の壮麗な建築物です。正式名称を「慶應義塾大講堂」といい、2000人もの収容人数を誇る大ホールでした。1915年に竣工して以来、入学式や卒業式といった大学の重要な式典のほか、講演会、音楽会、演劇など、さまざまな文化イベントの舞台として活用され、学生や市民に親しまれました。

建設の背景と特徴

慶應義塾の学生数増加に伴い、より大きなホールが必要となったことが、三田大講堂建設のきっかけです。森村財閥の創始者である森村市左衛門が発起人となり、福沢桃介ら有志の寄付によって建設が始まりました。1913年12月19日に着工し、1915年4月25日に完成しました。

三田キャンパス西側の崖上に建てられた大講堂は、鉄骨煉瓦造りの三階建てで、建坪は225坪、収容人数は2000人。全席長腰掛で、1階は移動可能、2、3階の桟敷席は固定式という構造でした。立ち見を含めると約2500人が収容可能で、当時の東京でも屈指の規模を誇りました。北、東、南の三方に側窓を設け、屋根窓の下にはステンドグラスがはめ込まれるなど、採光にも工夫が凝らされていました。

東京帝国大学の安田講堂や早稲田大学の大隈講堂よりも早く竣工した三田大講堂は、当時の大学講堂建築の中でも重要な存在でした。完成後、慶應義塾の入学式、卒業式、その他の主要な式典はすべてこの大講堂で行われるようになりました。

文化の中心としての役割

三田大講堂は、大学の式典だけでなく、各種講演会や音楽会、演劇などにも利用され、当時の市民にとっても文化的な拠点となっていました。1922年には、世界的に有名な物理学者アルベルト・アインシュタインが講演会を開催したことでも知られています。

1923年の関東大震災で外壁が大きく破損しましたが、三井家、森村財閥、古河虎之助などの寄付により改修工事が行われました。玄関が改装され、3階のバルコニーにはユニコン像が設置されました。また、天窓には2本の剣が新設されました。

焼失とその後

1945年5月26日の東京大空襲により、三田大講堂は5割が焼失。戦後の財閥解体や、慶應義塾関係者の公職追放により、再建は不可能となりました。復員してきた塾生たちは、赤さびた鉄骨と赤煉瓦の瓦礫の山を目撃することになりました。

三田大講堂を失った慶應義塾大学は、創立100周年となる「日吉記念館」が完成するまで、入学式や卒業式などの式典を野外で行わざるを得ませんでした。焼け残った外壁は1957年に取り壊され、その跡地に「西校舎」が建設されました。

ユニコン像

関東大震災後の改修で3階バルコニーに設置されたユニコン像は、一対で盾を持っていますが、その設置理由や「ユニコン」と名付けられた理由は不明です。その姿は、本来のユニコーンとは異なり、ガーゴイルに似ていました。

戦後、一体が行方不明になり、もう一体は破損した状態で西校舎脇に放置されていましたが、中等部卒業生や旧商工学校同窓会の寄付により修復・復元され、現在は中等部本館の玄関脇に設置されています。

今日、慶應義塾大学には通信教育部の卒業生に授与する「ユニコン賞」があり、アメリカンフットボール部は「UNICORNS」と名乗っています。また、1962年にデビューした応援指導部の公式キャラクターも「ユニコン君」と呼ばれ、親しまれています。

三田大講堂の主な式典・イベント

入学式、卒業式
1915年6月26日：春季大演奏会（アドルフォ・サルコリ出演）
1916年7月2日：インドの詩人タゴール来塾。演題「日本の精神を樹立せよ」
1918年11月25日：原敬首相来塾講演会
1922年11月19日：アルベルト・アインシュタイン講演会
1932年5月9日：慶應義塾創立75年記念式典（秩父宮殿下、犬養毅首相ら3000名参列）
1933年10月11日：慶應義塾大学応援部発会式
1934年11月18日：幼稚舎創立60周年記念祝賀式
1941年1月10日：福澤先生誕生記念会で現塾歌発表
1943年11月17日：塾生出陣壮行音楽祭（藤原義江、斎田愛子、四家文子、大谷洌子出演）
1943年11月20日：慶應義塾関係戦没者合同慰霊祭
その他、各種演説会、英語会、音楽会、活動写真会など

関連項目

白亞館
萬来舎

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