上信電鉄100形電車

上信電鉄100形電車は、1980年（昭和55年）より上信線で営業運転を開始し、1996年（平成8年）にその役目を終えた通勤形車両です。この形式は、西武鉄道で活躍していた451系および601系（クハ1601形からクハ1651形へ改番）といった車両を譲り受け、上信電鉄の線路事情や運用形態に合わせて改造を施したものです。

導入の背景と編成

本形式の導入は、1980年度から1981年度にかけて推進された上信線近代化事業の一環として位置づけられていました。当時使用されていた旧型車両は走行性能が低かったため、これらを置き換えることでスピードアップを図ることが主な目的でした。当初計画では、将来的な新型車両導入までの「つなぎ」として考えられていました。1980年から1981年にかけて、制御電動車のクモハ100形と制御付随車のクハ100形からなる2両編成が3本（101編成、102編成、103編成）投入されました。その後、後述する事故による廃車の補充として、1985年（昭和60年）にもう1本（105編成）が追加で導入され、合計4編成が在籍しました（ただし、104編成は存在しません）。

譲渡に伴う改造

西武鉄道から譲り受けた車両は、主にクモハ451形でした。上信電鉄では、電動車（M）と付随車（T）による2両編成（MTユニット）での運用を前提としたため、一部の車両に大規模な改造を施しました。西武時代の奇数番号車は制御電動車クモハ100形となり、偶数番号車はモーターなどの電気機器を撤去して制御付随車クハ100形に改造されました。近代化事業による高速化に対応するため、クモハ100形は台車を西武501系廃車発生品のTR25形空気ばね台車に、主電動機も同じく501系由来のMT30形（出力128kW）に交換され、出力が強化されました。クハ100形は、台車を西武の廃車発生品であるTR11形に変更した上で、クモハ100形から電動発電機（MG）と空気圧縮機（CP）を移設し、編成全体で必要な機器を分担する形態とされました。このほか、客室内に車掌スイッチが新たに設置されるなどの改造も行われています。ただし、102編成の代替として入線した105編成は、当初からクモハ+クハの編成で譲り受けられたため、クモハの台車は釣り合い梁式のTR14A形、主電動機はMT15系といった元の仕様のままでした。

車体塗装の変遷

登場時の100形は、クリーム色を基調とし、客室窓周りや雨どい、車体下部に帯状の薄茶色が配されていました。前面については、運転台直後の窓部分から斜めに下る1000形のデザインを取り入れたアレンジが加えられていました。しかし、運用期間中に発生した事故後、塗装デザインはそのままに、赤とクリーム色を基調とする配色に変更されました。また、最後まで活躍した103編成は、引退間際には200形と同じく、旧標準塗装から紺色の帯を除いたコーラルレッド一色の姿となりました。さらに、廃車後に高崎駅構内で倉庫として使用されていた103編成は、後に塗り直しが行われ、現役時代にはなかった紺色の帯が追加され、デハ205形などに施されていた旧標準塗装となりました。

活躍の終焉

運用期間中には予期せぬ出来事もありました。1984年（昭和59年）12月21日には、102編成が正面衝突事故に遭い、翌1985年（昭和60年）3月に廃車となりました。この事故に伴う車両不足を補うため、急遽、当時まだ解体されていなかった西武鉄道のモハ461形とクハ1662形が譲り受けられ、105編成として導入されました。この105編成は種車の違いから、クモハの前面は元の切妻3枚窓であった一方、クハの前面は元西武601系由来の湘南形2枚窓となっており、特徴的な外観でした。しかし、上信線近代化事業は当初期待したほどの収益改善には繋がらず、新造車による本形式の置き換え計画は変更されました。代わりに、同じく西武鉄道から譲り受けた150形が後継車両として導入されることになり、150形の増備に伴って、100形は1993年（平成5年）から1996年（平成8年）にかけて順次営業運転を終了し、廃車されました。

廃車後の足跡

営業運転を終えた車両のうち、103編成は廃車後、高崎駅の構内で資材庫として活用されていました。JR高崎線と上信線に挟まれた側線に留置されていたため、高崎駅を利用する多くの人々からその姿を見ることができました。長期間にわたり屋外に置かれていたため車体の荒廃が進んでいましたが、2012年11月には塗り直しが行われ、旧標準塗装に復元された姿となりました。しかし、その後2017年5月から6月にかけて解体され、これにより、かつて西武鉄道で活躍した451系を由来とする車両は全て姿を消すこととなりました。

車歴

各編成の詳細は以下の通りです。

- 101編成クモハ101-クハ101（旧西武クモハ455-クモハ468）1993年2月16日廃車
- 102編成クモハ102-クハ102（旧西武クモハ467-クモハ464）1985年3月26日廃車
- 103編成クモハ103-クハ103（旧西武クモハ463-クモハ466）1996年12月6日廃車
- 105編成クモハ105-クハ105（旧西武クモハ461-クハ1662）1994年9月5日廃車（※クハ105のみ1996年12月6日廃車）

上信電鉄100形電車