上原城

上原城：諏訪地方を統治した山城

長野県茅野市上原地区に位置する上原城は、中世の山城として知られています。標高978mの金毘羅山山頂とその中腹に築かれた、根小屋式山城という構造が特徴です。諏訪氏の拠点として、その歴史は室町時代後期まで遡ると考えられており、長く諏訪地方の政治・経済の中心地として栄えました。

築城と諏訪氏支配

正確な築城年代は不明ですが、室町時代の文正元年（1466年）頃、諏訪信満が中腹に居館を築いたとされています。その後、諏訪氏は5代70年以上にわたって上原城を拠点に諏訪地方を治めました。『守矢頼実書留』には、上原城下町に堀巡りが存在したことが記されており、城下町は信濃国衆の小規模城下町「宿城」として機能していたと考えられています。この城下町には、諏訪大社上社と神宮寺（別当寺）の門前町が含まれ、諏訪地方の政治経済の中枢を担っていました。

武田氏による支配と高島城への移転

天文11年（1542年）、甲斐国の武田晴信（信玄）が信濃侵攻を開始。高遠頼継と共に、当時の領主・諏訪頼重を滅ぼし、諏訪郡は武田氏の支配下に入りました。武田氏は、譜代家老の板垣信方を諏訪郡代として上原城に配置し、城代を通して諏訪地方を統治しました。板垣信方は、武田氏の諏訪・佐久郡侵攻において先発隊を指揮するなど、上原城配置以前からこの地域に関わっていました。しかし、天文17年（1548年）2月、信濃村上氏との上田原の戦いで戦死します。その後、弟の室住玄蕃充虎登、そして長坂虎房（光堅）が相次いで上原城代に任命されました。天文18年（1549年）、武田氏は新たな拠点として高島城（茶臼山城）を築城し、政治の中心は上原城から高島城に移りました。上原城はその後も存在しましたが、主要な役割を終えました。

武田氏滅亡と上原城の廃城

天正10年（1582年）3月、織田・徳川連合軍による甲州征伐によって武田氏が滅亡すると、上原城も廃城となりました。上原城下町は、政庁が移転した後も一時的に存続しましたが、江戸時代には諏訪高島城を中心に新たな城下町が整備されたことで、次第に衰退し消滅していきました。

現在の遺構

現在も上原城跡には、主郭や土塁、二の郭、三の郭、曲輪、空堀、物見石などの遺構が残っており、当時の城の姿を偲ぶことができます。これらの遺構は、かつてこの地で展開された歴史の証として、静かにその存在感を示しています。上原城跡は、長野県指定史跡「諏訪氏城跡」の一部として保護されています。

交通アクセス

JR中央本線茅野駅から諏訪バス岡谷線で「頼岳寺」バス停下車、徒歩約50分
中央自動車道諏訪ICから国道20号経由で車で約10分

上原城は、諏訪地方の歴史を深く理解するために欠かせない重要な史跡です。訪れる際には、その歴史と遺構に思いを馳せ、かつてこの地で繰り広げられた出来事を想像してみてください。

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