上黒岩岩陰遺跡

上黒岩岩陰遺跡

上黒岩岩陰遺跡（かみくろいわいわかげいせき）は、愛媛県上浮穴郡久万高原町で1961年に発見された縄文時代早期を中心とする遺跡です。この遺跡は国の史跡に指定されており、日本の考古学において重要な地点とされています。発掘調査により、縄文時代の様々な遺物が出土し、その歴史的価値が注目されています。

立地

この遺跡は、石鎚山の西南麓に流れる面河渓が久万川と結びつく地点から約3キロメートル上流に位置し、右岸の河岸段丘上に存在しています。また、高さ30メートルの石灰岩の露出した岩陰の中にあり、遺跡の中心は岩壁の北端と西南側面に広がっています。

発見と調査

上黒岩岩陰遺跡は、1961年に近隣の中学生によって発見されたことで広く知られるようになりました。その後1970年までに5回にわたり発掘調査が行われ、多段階の遺物含有層が確認されました。調査の結果、縄文時代草創期から後期にかけて、約1万年にわたる使用が明らかとなりました。

特に1962年の調査では、第4層から縄文早期の人骨が発見されています。また、同年8月には日本考古学協会の特別調査チームが行った調査により、多様な遺物が出土しました。その中には、細隆起線文土器、尖頭器、矢柄研磨器、削器、岩石に刻まれた線刻岩版などが含まれています。ここで出土した遺物の年代測定では、6層が約1万7000年前、11層が約1万2165年前とされています。

遺物の特徴

遺跡の出土品の中で特に注目されるのは、投槍の刺さった腰骨と「ヴィーナス像」と呼ばれる女神像線刻礫です。投槍が刺さった腰骨は元々縄文時代早期の男性骨とされていましたが、後の研究で経産婦のものと判明し、死後儀礼の可能性も示唆されています。また、女神像線刻礫は鋭利な剥片石器で書かれた女性像で、信仰の対象であったと考えられています。この種の女神像が出土したのは、日本ではこの遺跡が初めてです。

出土した動物遺体には、ニホンジカやイノシシ、ニホンザル、オオヤマネコなど、多様な種が確認されており、骨髄を利用した解体痕が見つかっています。特にイヌ（縄文犬）の埋葬事例が注目されています。また、カワニナが大量に出土したことも特筆され、食用説や自然堆積の可能性について議論がなされています。

保存と史跡指定

この遺跡は1962年に愛媛県の史跡に指定され、1964年には遺跡の範囲が公有化されました。1971年には国の史跡に指定され、出土品は上黒岩岩陰遺跡考古館で展示されています。遺礫の保存には科学的手法が用いられ、断面観察が可能となるよう工夫がなされています。

アクセス

上黒岩岩陰遺跡へのアクセスは、乗用車の利用が便利です。国道33号線沿いに位置する考古館まで、松山市役所から約80分、久万高原町役場からは約10分で到着します。また、バスを利用する場合、久万高原町からのバス路線が運行しています。JR松山駅からはバスでのアクセスが可能ですが、近年の変更により利用するバスが変更されることもあるため、事前に情報を確認することをおすすめします。

この遺跡は、縄文時代の人々の暮らしや文化を探る上での貴重な資料となっています。上黒岩岩陰遺跡は、日本の考古学界において特別な存在であり、多くの人々にその魅力を伝えています。

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