下中弥三郎

下中弥三郎の生涯と業績

下中弥三郎（しもなか やさぶろう）は、1878年6月12日に兵庫県多紀郡今田村（現在の丹波篠山市）に生まれました。幼少期に父を亡くした彼は、陶工として生計を立てながら教育の道を歩み始めます。1898年には神戸市の雲中小学校で代用教員としてのキャリアをスタートさせ、小学校準教員検定試験に合格しました。

1902年、彼は東京に上京し、『児童新聞』や『婦女新聞』の編集に関与。その後、1910年には中等教員検定試験に合格し、1911年から1918年にかけて埼玉県師範学校で嘱託教師を務めました。教育と民主主義の重要性を認識していた彼は、農本主義に影響を受け、1919年に啓明会を設立。これは後に日本教員組合啓明会と改称され、彼は学習権や教育委員会制度の確立を求める活動を展開します。

1923年に「教育の世紀社」を創設し、翌年には「池袋児童の村小学校」の設立を手伝うなど、教育改革に尽力しました。また、1914年には平凡社を設立し、1931年から1935年にかけて『大百科事典』の発行を手掛けることで、事典出版社としての地位を確立しました。

1930年代には国家主義的な立場に移行し、1932年には日本国家社会主義学盟の顧問に就任。政治活動にも関与し、国民日本党の結成を調整するも、同党内の派閥争いで新日本国民同盟が結成されることになります。1940年には大政翼賛会の発足に協力し、その後公職追放を受けることとなります。

戦後、追放措置が解除された1951年に再び平凡社の社長に復帰。また、1955年には世界平和アピール七人委員会を設立し、平和運動や世界連邦運動に取り組みました。さらに、彼は1957年に日本書籍出版協会の初代会長に就任し、晩年まで活発に活動を続けました。特に1961年、アメリカのケネディ大統領に世界平和に関する要望書を送付して返信を受け取ったその夜、82歳でこの世を去りました。

年譜

下中の年譜は彼の生涯の重要な出来事を示しています。

• - 1878年: 兵庫県多紀郡今田村に生まれる。
• - 1898年: 神戸市雲中小学校の代用教員となる。
• - 1902年: 東京に上京し、『児童新聞』を創刊。
• - 1914年: 平凡社を設立し、『ポケット顧問や、此は便利だ』を出版。
• - 1919年: 啓明会を設立し、教育改造の四綱領を発表。
• - 1931年-35年:『大百科事典』を刊行。
• - 1940年: 大政翼賛会の発足に協力。
• - 1951年: 追放解除、平凡社社長に復帰。
• - 1961年: ケネディ大統領に要望書を送り、同年死去。

著書

下中弥三郎は多くの著作があり、その一部は以下の通りです。

• - 『小学校に於ける国語』（1901年）
• - 『教育再造』（1920年）
• - 『万人労働の教育』（1923年）
• - 『維新を語る』（1934年）

下中弥三郎は、平凡社の創業者、教育者、そして活動家としての多面的な顔を持ち、教育や社会運動に大きな影響を与えた重要な人物でした。

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