下伊敷

下伊敷（しもいしき）

鹿児島市北部に位置する下伊敷は、その歴史と地理的特徴から、多様な顔を持つ地域です。

地理

下伊敷は、鹿児島市北部に位置し、甲突川とその支流である山崎川、幸加木川が合流する地点にあります。これらの川が形成した平坦な土地が広がっており、その周囲を伊敷、伊敷台、草牟田町、玉里団地、若葉町、小野といった地域に囲まれています。町の西部には南北に国道3号線が走り、北部には東西に鹿児島県道208号坂元伊敷線が通っています。これらの道路沿いには商店などの商業施設も見られ、住宅地としての静けさと商業的な活気が混在しています。

歴史

下伊敷の歴史は古く、元々は「伊敷」という一つの村でした。南北朝時代頃に上伊敷と下伊敷に分かれたとされています。室町時代にはすでに「下伊敷」という地名が見られ、薩摩国鹿児島郡に属していました。江戸時代には、鹿児島近在の「近名」として区分され、村高は時代とともに変動しました。また、下伊敷にある伊邇色神社は、古くからこの地を見守ってきた存在です。この神社の名前が、伊敷の地名の由来とする説もありますが、異説も存在します。

近代以降の変遷

1871年（明治4年）には草牟田村が下伊敷村に編入されました。1889年（明治22年）の町村制施行により、上伊敷村、下伊敷村などと合併し伊敷村となり、下伊敷は伊敷村の大字となりました。1892年（明治25年）には国道（現在の国道3号）が開通し、交通の要所としても発展しました。1898年（明治31年）には、大日本帝国陸軍の歩兵第45連隊が移転し、連隊本部が置かれたことも、この地域の歴史を語る上で重要な出来事です。連隊の跡地は、現在の鹿児島市立玉江小学校から鹿児島県立短期大学付近にあたり、県立短期大学の正門は旧連隊の営門を再利用したものです。その後、1911年と1920年には一部が鹿児島市に編入され、草牟田町や玉里町となりました。

鹿児島市編入後

1950年（昭和25年）に伊敷村が鹿児島市に編入されると同時に、大字下伊敷の区域は鹿児島市の「下伊敷町」となりました。その後、1977年から1995年にかけて、町の一部が坂元町や玉里団地などに編入されたり、住居表示の実施により「下伊敷一丁目」から「下伊敷三丁目」が設置されたりするなど、町域の再編が行われました。また、2002年以降には、伊敷ニュータウン地区や明ヶ窪地区の住居表示実施に伴い、伊敷台が新たに設置されています。

自然環境

下伊敷二丁目には、愛宕山に隣接する常緑広葉樹林が鹿児島市条例に基づく自然環境保護地区に指定されており、豊かな自然が守られています。また、地域を流れる甲突川、山崎川は、この地域の景観を形成する重要な要素です。

施設

下伊敷には、国土交通省の出張所や高齢者福祉センター、学校などの公共施設、郵便局、寺社があります。特に教育施設が充実しており、鹿児島県立短期大学、鹿児島大学教育学部附属特別支援学校、鹿児島市立伊敷中学校、鹿児島市立玉江小学校などがあります。かつては、鹿児島県立開陽高等学校や鹿児島県立盲学校も所在していましたが、それぞれ移転しています。また、旧陸軍の連隊本部が置かれていた関係から、関連施設も存在しています。

交通

下伊敷は、国道3号線や鹿児島県道208号線などの主要道路が通っており、交通の便が良い地域です。バス路線も充実しており、鹿児島市内各地へのアクセスが容易です。かつては鹿児島市電伊敷線も運行しており、玉江小学校前電停と下伊敷電停が設置されていましたが、1985年に廃止されました。

まとめ

下伊敷は、豊かな自然、歴史、そして現代的な都市機能が融合した地域です。古くからの歴史を持ちながら、時代の変化に合わせて発展を続けており、住む人々にとって魅力的な場所となっています。

もう一度検索