下山手通

下手通：歴史と文化が織りなす神戸の街

兵庫県神戸市中央区に位置する下山手通は、1丁目から9丁目まで続く、歴史と文化が息づく地域です。生田神社をはじめ、兵庫県庁、兵庫県警察本部、本願寺神戸別院（通称：モダン寺）といった重要な施設が点在し、住宅地と商業地が調和した街並みが特徴です。北には中山手通、南には北長狭通（花隈町を挟む）、西には楠町と隣接しており、東西に長く伸びるその形状は、神戸の歴史と発展を物語っています。

明治時代からの変遷：街の形成

下山手通の起源は明治6年（1873年）にさかのぼります。山手に新道が開通した際に、神戸町生田宮町、花隈町、宇治野町、神戸一番組の一部を統合して誕生しました。当初は7丁目まででしたが、明治27年（1894年）には、一部が花隈町、中山手通に編入され、7丁目が分割されて8丁目が誕生。さらに、大正3年（1914年）には宇治野町の一部を編入し、9丁目が設置されました。

この期間、下山手通には数多くの学校や医療機関が設立されました。明治2年（1869年）には兵庫県立神戸病院（現在の神戸大学医学部附属病院）が設立され、明治6年（1873年）には花隈小学校が開校。その後、神戸師範学校（現在の御影師範学校）、神戸商法講習所（現在の兵庫県立神戸商業高校）、親和女学校（現在の親和中学校・高等学校）などが下山手通に移転または設立され、教育・医療の中心地として発展していきました。

また、宗教施設も数多く建設されました。明治40年（1906年）には日蓮宗本圀寺末本寿院が、明治43年（1909年）には下山手カトリック教会が、大正13年（1924年）には日本メソジスト教会（現在の日本基督教団神戸栄光教会）が、そして昭和4年（1929年）には浄土真宗本願寺派善福寺（本願寺神戸別院）が完成し、近代的な建築様式で知られる「モダン寺」として親しまれるようになりました。

交通の発展と都市基盤

大正11年（1922年）の神戸市電上沢線の開通、昭和60年（1985年）の神戸市営地下鉄の開通など、交通網の発展も下山手通の近代化を促しました。昭和55年（1980年）には、中山手通、北長狭通との境界変更が行われ、現在の街区が形成されました。

近代から現代へ：変化と発展

昭和41年（1966年）には兵庫県陶芸館、昭和43年（1968年）には県民会館が建設されるなど、文化施設の整備も進みました。平成7年（1995年）には本願寺神戸別院が建て替えられ、現代的な姿へと生まれ変わりました。近年では、平成30年（2018年）に下山手通1丁目、2丁目が暴力団排除特別強化地域に指定されるなど、社会情勢の変化にも対応しています。

人口変遷：時代の流れを映す鏡

下山手通の人口は、明治時代から昭和にかけて増加を続け、昭和35年（1960年）には世帯数2,671世帯、人口9,749人に達しました。その後、平成17年（2005年）には世帯数3,884世帯、人口6,480人と減少傾向が見られますが、それでも歴史と文化が凝縮された、神戸を代表する地域としての存在感を保ち続けています。

参考文献

神戸史学会 編『神戸の町名 改訂版』神戸新聞総合出版センター、2007年
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 竹内理三 編『角川日本地名大辞典 28 兵庫県』角川書店、1988年

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