下条信正

下条信正（しもじょう のぶまさ）

生涯

下条信正は、天文21年（1552年）に、甲斐武田氏の家臣である下条信氏の長男として生まれました。彼の生母については、武田信玄の妹であるという説と、下条氏の重臣である糟谷氏の娘であるという説があります。どちらが真実かは定かではありませんが、いずれにしても、下条氏は武田氏にとって重要な家臣であったことが伺えます。

天正10年（1582年）2月、織田信長による甲州征伐が始まると、信正は信濃吉岡城の守備を任されました。しかし、叔父である下条氏長が織田方の武将である河尻秀隆や森長可と内通し、裏切ったため、吉岡城は落城してしまいます。信正は、父の信氏、弟の頼安、嫡男の牛千世丸と共に、三河の黒瀬へと落ち延びました。

武田氏が滅亡した後の同年3月22日、信正は父に先立ち病死しました。享年32歳という若さでした。信正の死後、嫡男の牛千世丸は下条康長と名を改め、徳川家康に仕えることとなります。

しかし、天正13年（1585年）の第一次上田合戦において、下条氏は徳川方として参戦していましたが、陣小屋で火事を起こしてしまい、謀叛の疑いをかけられるという事件が起こります。幼少の康長に代わり家臣が抗弁しましたが、家来の佐々木氏が逃亡し無実を訴えた為、康長は家臣に連れられ、他国へ逃れ下条氏は歴史から姿を消してしまいます。また、同年12月12日には、徳川家康が康長(牛千代)に対し、美濃恵那郡落合村を苗木遠山氏の遠山久兵衛に、そして美濃恵那郡上村を明知遠山氏の遠山勘左衛門へ引き渡すよう書状を送り命じています。この書状は、下条氏が没落していく過程を示す資料として重要な意味を持っています。

信正の生涯は、武田氏の興亡と密接に結びついており、戦国時代の武将の悲哀を象徴していると言えるでしょう。

下条氏について

下条氏は、信濃国伊那郡を拠点とした国衆です。武田氏の家臣として、その勢力拡大に貢献しましたが、武田氏滅亡後は没落しました。

脚注

参考文献
平山優『天正壬午の乱』学研 2011年
「延宝六年小倉藩地方知行帳」、『県資』第5輯
柴辻俊六、平山優、黒田基樹、丸島和洋『武田氏家臣団人名辞典』東京堂出版、2015年

関連項目
下条氏

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