明知遠山氏

明知遠山氏

明知遠山氏は、藤原利仁を祖とする加藤氏の一門、美濃遠山氏の分家にあたります。鎌倉時代初期に遠山景重が明知城を築いて以来、明治の版籍奉還まで、この地を支配しました。

歴史

鎌倉時代から戦国時代

明知遠山氏の始まりは、鎌倉時代初期、遠山景朝の次男である遠山景重が、遠山荘内の淡氣郷を相続し、明知城を拠点としたことに遡ります。景重は三郎兵衛と名乗り、これが明知遠山氏の初代となります。その後、遠山氏は代々この地を守り、景長、朝廉、景忠、景房、頼景、景基、景次、景勝、景保、景成、直景、景行と続きました。

13世紀には、遠山景長が鎌倉の鶴岡八幡宮の放生会に供奉し、将軍宗尊親王の上洛にも従いました。しかし、1272年には鎌倉幕府により、景長の手向郷の地頭職が取り上げられるという出来事もありました。1331年には遠山景房が恵那郡内の地頭職を安堵され、その後も遠山氏は手向郷の支配を続けました。

戦国時代末期には、遠山利景が武田勝頼の家臣、山県昌景の侵攻により領地を失います。その後、領地を奪還したものの、本能寺の変後、羽柴秀吉の家臣、森長可の圧迫により明知城を離れ、三河へ移り徳川家康の麾下に入りました。

江戸時代

関ヶ原の戦いでは、東軍に参加し、木曽・東濃の戦いで西軍の諸将を破り、明知城を奪還しました。この功績により、江戸時代には旧領を回復し、6531石の交代寄合（参勤交代を行う旗本）となりました。明知城を廃し、明知陣屋を本拠地としましたが、5代目の遠山伊清の時に江戸常駐の旗本寄合席となり、明知陣屋は代官の村上氏に任せられました。

明知遠山氏の菩提寺は、岐阜県恵那市明智町にある龍護寺で、ここには江戸時代以降の歴代当主の墓が現存しています。

明知遠山氏の動向

16世紀初頭、市場城主の小原鱸氏が、娘を明知遠山氏に嫁がせる際に、野原村を化粧料として割譲しました。また、遠山氏の宗家である岩村[[遠山氏]]が途絶えたため、明知遠山氏の遠山頼景が遠山荘の地頭となり、岩村城主も兼ねました。

1570年には、武田信玄の重臣秋山虎繁が侵入した上村合戦で、遠山景行が徳川方として戦い自刃しました。その後、武田氏の西上作戦により岩村城が降伏し、明知遠山氏の家臣も武田方についたため、多くの犠牲者が出ました。1574年には、武田勝頼の家臣山県昌景の侵攻で明知城が陥落し、城主代行の遠山友治も討死しました。その後、遠山利景が還俗して跡を継ぎました。

1582年の本能寺の変後、森長可が東美濃を制圧したため、遠山利景は三河足助城へ逃れ、徳川家康の麾下に入りました。1583年には、森長可により、人質となっていた利景の娘が磔刑に処されるという悲劇も起こりました。

1584年の小牧・長久手の戦いでは、明知城を奪還しましたが、和睦により森氏に返還されました。関ヶ原の戦いでは、東軍として参戦し、明知城を再び奪還し旧領を回復しました。

江戸時代には、遠山利景が交代寄合となり、串原遠山氏の遠山経景が家老を務めました。2代目の遠山方景は、大坂の陣で活躍し、明知城を破却して明知陣屋を築きました。また、雲祥寺を開創しました。その後も、幕府の要職を歴任し、江戸常駐の旗本となりました。

明知遠山氏の知行所

明知遠山氏の知行所は、美濃国恵那郡を中心に、土岐郡の一部にも及びました。その石高は、合計6,531石でした。領内には、明知村をはじめとする多くの村々が含まれていました。

家紋

明知遠山氏の家紋は、主紋が「丸に二引き」、替紋が「丸に六本格子」です。

関連神社・寺院

明知遠山氏に関連する神社には、八王子神社があり、寺院には龍護寺、安住寺、雲祥寺、観音寺、萬勝寺、長楽寺があります。また、江戸における菩提寺として南泉寺、遠山金四郎家の菩提寺として本妙寺があります。

重臣

明知遠山氏の重臣には、家老の串原遠山氏（後に永田氏に改姓）、明知陣屋代官の村上氏、門田氏、工藤氏がいました。

江戸屋敷

江戸屋敷は、下谷から小日向台に移されました。

明知騒動

明知遠山氏の領内では、元禄12年（1699年）、宝暦13年（1763年）、文政2年から4年（1819年～1821年）、慶応2年（1866年）の四度にわたり、百姓一揆が勃発しました。これらの騒動は、領民の不満が表面化したものであり、明知遠山氏の支配体制に大きな影響を与えました。

元禄明知騒動

五代目遠山伊清の代に発生した騒動で、不作による減免や救済米の交付を求めるものでした。この騒動の結果、遠山伊清は閉門処分となり、明知遠山氏は交代寄合から江戸定府の旗本へと変わりました。

宝暦明知騒動

七代目遠山景逵の代に発生した騒動で、江戸屋敷の旗本と家中による頼母子講への加入要請が原因でした。領民による強い訴えにより、江戸の役人が罷免されるという結果になりました。

文政明知騒動

十代目遠山景珍の代に発生した騒動で、重税や調達金に対する不満が原因でした。領民たちは決起し、代官の屋敷を攻撃するなど激しい抵抗を見せました。最終的には、領民の要求が通り、代官が罷免されました。

慶応明知騒動

十一代目遠山景高の代に発生した騒動で、年貢減免と金納を求めるものでした。この騒動の最中に遠山景高が没しました。領民たちの強い訴えにより、減免が認められましたが、多くの者が処罰されました。

旗本・遠山金四郎家

明知遠山氏の分家として、遠山金四郎家があります。遠山方景の孫の代に分家し、遠山景元（金四郎）が有名です。ただし、景元は養子であるため、明知遠山氏の血筋ではありません。

分家

その他にも、松山遠山氏（伊予松山藩の次席家老）、武蔵遠山氏、相模遠山氏、信州遠山氏などの分家が存在します。

関連項目

明知城の戦い
東濃の戦い

参考文献

『恵那郡史』
『美濃国諸旧記』
『中津川市史』
『日本城郭大系』
『寛政重修諸家譜』
『群書類従』
『中世美濃遠山氏とその一族』
『明智町誌』
『瑞浪市史　歴史編』
『東濃雑録』
『恵那叢書』
『花営三代記』
『文安年中御番帳』
「遠山譜」

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