苗木遠山氏

苗木遠山氏の歴史

苗木遠山氏は、利仁流加藤氏の流れを汲む美濃遠山氏の一派です。その始まりは鎌倉時代初期、遠山景朝の長男である遠山景村が美濃国恵那郡の木曽川以北に進出したことに遡ります。以後、版籍奉還に至るまで、ほぼ同じ地域（恵那郡の木曽川以北と加茂郡東部）を支配し続けました。

成立と発展

文治元年（1185年）、加藤景廉が遠山荘の地頭となり、その子である遠山景朝が地名にちなんで遠山氏を名乗ったのが始まりです。遠山氏はその後、本家の岩村[[遠山氏]]をはじめ、恵那郡各地に分家し、「遠山七頭」と呼ばれるようになりました。苗木遠山氏は、その一つです。

仁治2年（1241年）、遠山景朝の子である遠山景村が、遠山荘の木曽川以北を領有するため、木曽川南岸から北岸の那木に進出しました。13世紀後半には、岩村[[遠山氏]]の遠山景光の次男である遠山光高が苗木遠山氏の当主となります。

元弘年間（1331年～1334年）には、遠山一雲入道・遠山景長親子が高森山に砦を築き、元弘～建武年間（1334年～1336年）には、遠山景利が福岡村植苗木に広恵寺城を築き、宗良親王を迎えました。正平5年（1350年）には、遠山景信が植苗木に廣恵寺を開基しています。

戦国時代の動乱

戦国時代に入ると、苗木遠山氏は周辺の勢力との間で激しい抗争を繰り広げます。正平16年（1361年）には、広恵寺城主であった遠山景信が京都で戦死、応永10年（1403年）には、遠山景直が長山光景を養子に迎えます。文明5年（1473年）には、足利義政の命により木曽家豊と小笠原家長が東濃に侵攻し、苗木遠山氏は一時的に両氏の傘下に入りました。

永正7年（1510年）には、遠山景正が所領争いで戦死、大永4年（1524年）には、小笠原定基の代官が苗木城下の神社を造営しています。大永6年（1526年）には、遠山昌利（一雲入道）が居館を高森山に移し、天文年間（1532年～1555年）には、遠山正廉（直廉と同一人物説あり）が高森山の館を拡張して苗木城を築城しました。

天文21年（1552年）、岩村[[遠山氏]]からの養子である遠山武景が殺害されたため、弟の遠山直廉が家督を継ぎました。直廉は高森山砦を拡張して苗木城を築き、恵那郡北部と加茂郡東部を領有しました。また、永禄3年（1560年）には、苗木勘太郎（遠山直廉と同一人物説あり）が織田氏との縁で桶狭間の戦いに出陣、織田信長の妹を娶りました。

織田・武田との関係

苗木遠山氏は、織田氏と武田氏という二大勢力の狭間で、その動向に大きく影響を受けました。永禄8年（1565年）には、苗木勘太郎の娘が織田信長の養女となり、後に武田勝頼に嫁ぎました。永禄11年（1568年）には、遠山直廉が武田信玄の命で駿河侵攻に参加、永禄12年（1569年）には、飛騨国益田郡へ侵攻しましたが、矢傷が原因で同年に亡くなりました。直廉には男子がいなかったため、信長は飯羽間遠山氏の遠山友勝を苗木城主としました。

元亀元年（1570年）、上村合戦で遠山友勝らが武田家臣に敗れ、元亀2年（1571年）には、遠山友忠が比叡山焼き討ちに参戦しました。元亀3年（1572年）には、武田氏が岩村城を包囲して開城させ、遠山氏領内の寺院を焼き討ちしました。天正2年（1574年）には、武田勝頼が苗木城を落とし、遠山氏は一時的に没落しました。

織田・豊臣政権下

天正3年（1575年）、織田信忠が岩村城を奪還し、東濃の諸城を奪い返しました。天正10年（1582年）の本能寺の変後、遠山友忠は羽柴秀吉についた森長可に攻められ、苗木城は落城しました。遠山友忠・遠山友政父子は浜松に移り、徳川家康の麾下に入りました。

江戸時代

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いで、遠山友政は徳川家康の命を受け苗木城を奪回し、苗木領を安堵され、苗木藩が成立しました。友政は、大坂冬の陣、夏の陣で武功を挙げました。その後、2代秀友、3代友貞は土地開発に力を尽くし、藩の基礎を確立しました。

元和元年（1615年）には、裏木曽と呼ばれた付知、川上、加子母の三か村が尾張藩領に移管され、藩の財政は厳しさを増しました。寛文4年（1664年）には、家老の遠山太左衛門が同僚を斬殺する事件が発生し、重臣遠山両家が断絶となり、苗木藩で遠山を名乗るのは藩主のみとなりました。

幕末から明治維新へ

幕府の度重なる手伝い普請や軍役により藩財政は窮乏し、歴代藩主は倹約令を出すなどして凌ぎました。最後の藩主の遠山友禄は、若年寄となり大坂警備も任されましたが、財政は破綻しました。明治維新後、藩の借金は大幅に縮小されましたが、徹底した廃仏毀釈が行われ、菩提寺の雲林寺をはじめ、藩内の全ての寺院が取り壊されました。

明治2年（1869年）には、遠山友詳（友禄）が版籍奉還により藩知事となり、明治4年（1871年）の廃藩置県で苗木藩は廃藩、苗木県となり、遠山友詳は華族となりました。明治17年（1884年）には、遠山友詳（友禄）は子爵に叙せられました。

苗木藩の領地

苗木藩は、恵那郡と加茂郡にまたがる以下の村々を領地としていました。

恵那郡：日比野村、上地村、瀬戸村、坂下村、上野村、田瀬村、下野村の一部、福岡村、高山村、蛭川村、中野方村、毛呂窪村、姫栗村
加茂郡：河合村、飯地村、峯村、下立村、福地村、赤河村、切井村、犬地村、上田村、広野村、若松村、名倉村、油井村、宇都尾村、田島村、中屋村、須崎村、柏本村、久須見村、宮代村、大沢村、下野村、神土村、越原村、有本村、室原村、久田島村、成山村、徳田村、黒川村

家紋と一族

苗木遠山氏の家紋は「丸に二引き」です。

一族には、館林遠山氏がおり、苗木遠山氏の弥右衛門景利を祖としています。

苗木藩主

苗木藩の歴代藩主は以下の通りです。

遠山友政
遠山秀友
遠山友貞
遠山友春
遠山友由
遠山友将
遠山友央
遠山友明
遠山友清
遠山友随
遠山友寿
遠山友詳（友禄）

菩提寺

苗木遠山氏の菩提寺は、廣恵寺と雲林寺です。

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