下条信氏

下条信氏の生涯

下条信氏（しもじょう のぶうじ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将です。下条氏は、下條とも表記されます。信濃小笠原氏の家臣であり、後に甲斐武田氏の家臣となりました。武田晴信（信玄）の義兄弟であり、信濃吉岡城主を務めました。兵庫助、伊豆守を名乗っています。正室は武田信虎の娘とする説もありますが、『下条記』によると重臣糟屋氏の娘ともされています。子に信正、頼安がいます。

出自

下条氏は、甲斐国巨摩郡下条（現在の山梨県韮崎市下条西割）を発祥とする武田氏の庶流とも言われています。しかし、室町時代中期に小笠原氏から養子を迎え、信濃国伊那郡伊賀良荘に移住したともされています。当初は信濃国守護の係累である鈴岡小笠原信定に仕え、武田氏の信濃侵攻には反武田勢として参加しました。

武田氏への臣従

天文年間（1532年-1555年）になると、小笠原氏は内紛により勢力が衰退します。その隙に、父の下条時氏が美濃国恵那郡の一部を占領しました。天文23年（1554年）8月、鈴岡城攻略前後に父と共に武田氏に降伏。遠山氏の領地であった美濃国恵那郡上村（現在の岐阜県恵那市上矢作町）と伊那郡知久平（現在の長野県飯田市）を知行として与えられました。弘治元年（1555年）に父・時氏が死去し、家督を継承しました。

武田氏の家臣として

信氏は、武田氏家臣の秋山虎繁（信友）の配下となり、武田氏の信濃先方衆として活動しました。武田晴信（信玄）に重用され、妹を正室に迎え、「信」の字を与えられて信氏と改名しました。『下条記』によると、信氏ら下伊那衆は山県昌景の与力に任じられたとされています。

武田氏の信濃先方衆として、弘治3年（1557年）の三河武節城攻め、永禄4年（1561年）の川中島の戦いにも参戦。永禄6年（1563年）には、今川氏真の依頼を受けた信玄の命により、信濃三河国境で松平元康（後の徳川家康）と接触しました。天正3年（1575年）4月には、武田勝頼による三河侵攻で足助城を攻略。その後、足助城の在番を命じられたため、同年8月の長篠の戦いには参戦していません。敗戦の報を受け、信濃に撤退しています。長篠の戦い後、勝頼による伊那郡防衛の指示では、浪合口（現在の長野県阿智村）と新野口（現在の長野県阿南町）の防衛を担当し、亡命してきた山家三方衆を与力としました。

甲州征伐と最期

天正10年（1582年）2月、織田信長による甲州征伐が始まると、信氏は子息の信正とともに滝沢要害（現在の長野県下[[伊那郡]]平谷村）で織田勢を迎え撃ちました。『信長公記』『甲乱記』によると、織田氏に降伏した下条氏長（九兵衛尉）らの謀反により退却を余儀なくされたとされています。その後、信氏は信正と共に三河国黒瀬（現在の愛知県新城市）に潜伏。同年3月22日には信正が死去し、信氏も遠江国宮脇（現在の静岡県掛川市）に移りますが、6月25日に同地で死去しました。享年54歳でした。

その後

天正壬午の乱では、徳川家康の後援を受けた信氏の次男・頼安と信正の子・牛千代（康長）が、飯田城に入った氏長を暗殺し、下条氏を継承しました。信正の子、康長（幼名牛千代）は後に徳川家康に仕えましたが、第二次上田合戦で出奔しました。信正の曾孫にあたる氏定(吉岡三郎兵衛)は、小倉藩の小笠原氏に仕えました。

関連作品

伊東潤著の短編小説『要らぬ駒』（『戦国鬼譚　惨』に収録）に登場しています。

参考文献

平山優『天正壬午の乱』学研ホールディングス、2011年
柴辻俊六、平山優、黒田基樹、丸島和洋『武田氏家臣団人名辞典』東京堂出版、2015年
平山優『天正壬午の乱』戎光祥出版、2015年

関連項目

下条氏

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