下沼駅

下沼駅：サロベツ原野の玄関口

北海道稚内市から南へ約90km、宗谷本線のほぼ中間に位置する下沼駅。周囲は牧草地と酪農施設が広がり、静かで雄大なサロベツ原野に隣接する、秘境駅として知られています。1926年9月25日、天塩線の延伸によって開業。その後、宗谷本線に編入され、国鉄、JR北海道と時代を経て現在に至ります。

歴史：幾多の変遷を乗り越え

開業当初は一般駅として賑わいを見せ、電報や貨物、荷物の取扱いを開始。しかし、時代の流れと共に、1963年には電報取扱いを廃止、1977年には貨物、1984年には荷物の取扱いをそれぞれ終了。1984年11月10日には無人化され、翌年には貨車駅舎に改築されました。2016年にはダイヤ改正により普通列車の本数が減便されましたが、全列車停車となりました。その後、2017年にはJR北海道から廃止の打診がありましたが、幌延町の努力により存続。2021年からは幌延町の管理に移行し、現在に至ります。住民の尽力により、駅舎には木製看板が設置され、花壇や旅行者の置き土産などで彩られています。

駅構造：単式ホームの無人駅

現在は単式ホーム1面1線の無人駅です。かつては列車交換が可能な相対式ホーム2面2線でしたが、合理化によって現在の姿となりました。ホーム前後の線路は、かつての分岐器の名残でわずかに湾曲しています。改築された貨車駅舎は、地元住民の温かい思いが感じられる空間です。トイレはありません。2017年には、幌延町による「マイステーション運動」の一環として、地元のイメージキャラクターをデザインした外壁塗装が施されました。

利用状況：静かな日常と特別なイベント

かつては、近隣の学校に通う生徒の利用も多かったそうですが、現在は日常的な利用は少ないようです。しかし、下沼の寺院で行われるイベントの際には、市街地からの利用が見られるとのこと。2020年、幌延町はサロベツ湿原などの観光資源へのアクセス拠点としての価値を強調し、ふるさと納税などを原資とした町管理への移行を発表。その結果、2021年4月、幌延町による維持管理に移行しました。

駅周辺：サロベツ原原野の自然と歴史

駅周辺は、西側に牧草地や酪農施設、寺院などが点在。防風林の先には広大なサロベツ原野が広がっています。東側は鉄道林に覆われた丘陵地が広がります。

駅近くには、地元住民が管理する湧水地「湧水サロベツ 権左衛門」があり、誰でも自由に水を汲むことができます。また、徒歩圏内には名山台展望公園があり、利尻富士や日本海、サロベツ原野の素晴らしい景色を眺めることができます。さらに、サロベツ原野、パンケ沼、幌延ビジターセンターといった観光スポットへのアクセス拠点として、下沼駅は重要な役割を担っています。

羽幌線計画との関わり：分岐点の論争

羽幌線の計画段階において、分岐点の選定を巡り、下沼駅と幌延駅で激しい論争がありました。最終的に、幌延駅が分岐点として選定され、現在の宗谷本線と羽幌線の路線形態が決定した背景には、下沼駅周辺の地盤の脆弱性や政治的な思惑もあったと考えられます。下沼駅周辺の地盤の軟弱さも、歴史的な背景の一つとして認識しておくべきでしょう。

まとめ：未来へ繋がる静かな駅

下沼駅は、歴史と自然、そして人々の思いが凝縮された場所です。静寂の中に力強い生命力を感じさせる、北海道の秘境駅です。サロベツ原野の自然に触れ、歴史を感じながら、ゆったりとした時間を過ごしたい方におすすめの場所です。将来も、この地に残り続けることを願っています。

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