下甑町瀬々野浦

下甑町瀬々野浦の概要

下甑町瀬々野浦（しもこしきちょうせせのうら）は、鹿児島県薩摩川内市に属する地域で、甑島列島の下甑島の北西部に位置しています。かつては甑島郡下甑村の一部でしたが、市町村合併を経て現在の薩摩川内市の一部となりました。この地域は、瀬々野浦地区と内川内地区という二つの主要な地区で構成されており、それぞれに異なる歴史と特色を持っています。2020年の時点での人口は96人、世帯数は72世帯と、小規模な集落です。

地理

瀬々野浦は、東シナ海に面しており、西部の海岸線には、ナポレオン岩や松島海岸、鷹巣瀬などの奇岩や断崖が連なっており、風光明媚な景観が広がっています。特にナポレオン岩は、その名の通り、フランスの皇帝ナポレオンの横顔に見えることで有名です。瀬々野浦地区は山に囲まれており、かつては陸路でのアクセスが困難で、海上交通に頼っていました。

内川内地区は、瀬々野浦からの移住者によって開拓された地域で、標高300メートルから400メートルの山腹に位置しています。この地区へ至る道路は自衛隊道路として整備され、住民の重要なライフラインとなっています。

自然保護

2015年には、甑島列島全体が甑島国定公園に指定され、瀬々野浦のほぼ全域がその区域に含まれています。これにより、景観や生態系の保全が図られています。また、一部は特別地域や特別保護地区に指定され、より厳格な保護が行われています。瀬々野浦の海域は「下甑島西海岸海域公園地区」として、海洋生物の保護が進められています。

山岳と島嶼

瀬々野浦周辺には、青潮岳（標高510.2m）や谷山（標高445.7m）といった山々がそびえ、豊かな自然環境を形成しています。また、海岸線には、ナポレオン岩をはじめとする奇岩や、松島、岩塔、ヘタ沖瀬などの岩礁が点在し、景観のアクセントとなっています。

小字

瀬々野浦には、浜里、古里、小里、開田など多くの小字が存在します。これらの小字は、歴史的な経緯や地形、土地利用などを反映しており、地域の細かな特徴を示しています。

歴史

瀬々野浦の地名は、江戸時代から確認されており、当時は薩摩藩の甑島郷に属していました。1471年に刊行された「海東諸国紀」には「世々九浦」として登場しており、古い歴史を持つことが伺えます。江戸時代の測量家、伊能忠敬の記録にも、瀬々野浦や内川内地区に関する記述が見られます。瀬々野浦地区は、古町川の河川改修工事で弥生時代中期の土器が発見されており、古くから人が居住していたと考えられています。内川内地区は、18世紀初めに瀬々野浦からの移住によって開拓されたとされています。

1889年の町村制施行により、瀬々野浦村は他の村と合併し下甑村となり、その大字となりました。その後、2004年の合併により薩摩川内市の一部となり、現在に至っています。

文化財

瀬々野浦には、国の重要無形民俗文化財である「甑島のトシドン」が伝わっています。これは、大晦日に来訪神が家々を訪れ、厄を払う行事であり、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。また、瀬々野浦には「ビーダナシ」と呼ばれるフヨウの繊維で織られた衣服が残っており、これは日本国内でもここだけで見られる貴重な文化財です。

施設

瀬々野浦には、薩摩川内市下甑瀬々野浦診療所や、薩摩川内市下甑内川内出張診療所など、医療施設があります。また、西山簡易郵便局は地域唯一の金融機関として機能しています。西浄寺は、真宗大谷派の寺院として地域住民の信仰を集めています。

教育

かつて瀬々野浦には、西山小学校、内川内小学校、西山中学校、内川内中学校が存在しましたが、少子化などの影響により、現在は全て廃校となっています。瀬々野浦の子供たちは、下甑島の他の地域の学校に通学しています。

交通

1972年に長浜～瀬々野浦、手打～瀬々野浦の道路が開通するまでは、交通の便が悪く、移動に苦労を伴いました。現在では、コミュニティバス「甑かのこゆりバス」が運行しており、地域住民の足となっています。

関連人物

お笑いタレント・俳優の塚地武雅さんは、母親が瀬々野浦出身であり、その縁で薩摩川内市の観光大使に任命されています。

まとめ

下甑町瀬々野浦は、豊かな自然と独自の文化が共存する地域です。奇岩が連なる海岸線や、山に囲まれた集落、そして古くから伝わる伝統文化は、訪れる人々を魅了します。過疎化が進む一方で、地域住民は伝統を守りながら生活しており、その魅力は今もなお失われていません。

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