下風呂温泉

下風呂温泉

下風呂温泉は、青森県下北郡風間浦村下風呂に位置する温泉地です。本州の最北端に近い温泉として知られ、大間温泉、桑畑温泉に次いで3番目に北に位置します。

泉質

下風呂温泉には、主に3つの源泉井があります。

大湯：酸性・含硫酸 - ナトリウム - 塩化物・硫酸塩泉（硫化水素型）。源泉温度は64℃で、湯は季節や気温によって白濁します。
新湯：含硫黄 - ナトリウム - 塩化物泉（硫化水素型）。源泉温度は74.5℃で、無色透明な湯が特徴です。
浜湯：ホウ酸-含硫黄 - ナトリウム・カルシウム - 塩化物泉（硫化水素型）。

大湯と新湯からの温泉は、村営温泉施設である「海峡の湯」に供給されています。

温泉街

温泉街は津軽海峡に面した海岸沿いの山肌に位置しています。以前は大湯と新湯という2つの共同浴場がありましたが、2020年11月30日に閉館。同年12月には、これらを統合した村営温泉施設「海峡の湯」が新たにオープンしました。温泉街には旅館や民宿も点在しています。

また、温泉街には未成線である大間線の遺構が残っており、「海峡メモリアルロード」として遊歩道が整備されています。

歴史

温泉名の由来は、この地域を指すアイヌ語の「シュマフラ」（臭い岩の意味）からきています。室町時代から歴史があり、康正年間の地図には「湯本」として記載されています。当時は凍傷に効能がある温泉として知られていました。1656年には、南部藩藩主・南部重信が入湯した記録が残っています。

古くはニシン漁師の湯治場として栄え、現在ではイカ漁の漁港として機能しており、温泉街が形成されました。夏から秋にかけては、イカ釣り漁船の漁火を見ることができます。

同志社大学の創立者である新島襄は、1864年4月18日に江戸から箱館へ向かう途中、下風呂港に寄港し、2日間温泉地に滞在しました。その様子は「函館紀行」に書き残されており、海峡いさりび公園には「新島襄寄港の地」の碑が建立されています。

作家の井上靖は、1958年3月に下風呂温泉に滞在・取材し、小説『海峡』を執筆しました。作品の舞台にもなっており、井上が宿泊した長谷旅館は「海峡」の宿として知られていました。長谷旅館は廃業しましたが、井上が投宿した参号室は多くのファンが見学に訪れていました。2019年1月の解体時には、部屋の部材や机、座布団が村によって保管されています。

2020年12月には、長谷旅館跡地に旧共同浴場の大湯と新湯を統合した村営温泉施設「海峡の湯」が開業しました。施設内には食堂のほか、2階には井上靖が『海峡』を執筆した部屋が再現されています。

また、水上勉の小説『飢餓海峡』の舞台にもなっており、この作品は映画化もされています。

アクセス

JR大湊線 下北駅から下北交通バス佐井線で約1時間10分。

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