不忍鏡子

不忍鏡子（しのばず きょうこ）

日本の女優、不忍鏡子は、1919年10月29日に北海道夕張で生まれました。本名は進藤幸（しんどう こう）。

生い立ちと松竹歌劇団時代

父親が鉄道省の技師だったため、幼少期は北海道内や樺太、東京府と転居を繰り返しました。1932年に精華高等女学校を中退後、松竹楽劇部に入団。この時、上野の不忍池にちなんで「不忍鏡子」という芸名が与えられました。同期には、日暮里子や井草鈴子などがおり、彼女らとともにレビューでデビューしました。芸名の由来は「不忍池は鏡の如し」からきています。

日活での映画女優としてのキャリア

1936年、16歳で日活多摩川撮影所に入社し、映画デビューを果たしました。当初は端役が多く、女給や女中役を演じることが多かったものの、内田吐夢監督との出会いは、後の彼女の女優人生に大きな影響を与えました。1940年には、満州へ集団移住する「大陸の花嫁」を演じ、日活を退社しました。

結婚、休業、そして離婚と復帰

1941年に映画監督の藤田潤一と結婚し、一時休業。しかし、戦後1953年に離婚。二人の息子を抱えながら女優として復帰することを決意しました。

東映での活躍

1954年、東映東京撮影所に入社し、本格的に映画界に復帰。この頃から、芸名を「不忍郷子」と改名。多くの作品に出演し、脇役としてその存在感を示しました。また、東映教育映画部にも積極的に出演し、子供向けの作品にも貢献しました。

1964年、内田吐夢監督の『飢餓海峡』で、重要な役を演じることになり、これを機に本名の「進藤幸」に改名しました。同作の成功を機に、テレビドラマへも出演する機会が増えました。

テレビドラマでの活躍と晩年

1970年代以降は、テレビドラマを中心に活躍。『太陽にほえろ!』や『特捜最前線』などの人気ドラマにゲスト出演を重ねました。1990年代には出演本数は減ったものの、単発ドラマなどで活躍を続けました。2002年には、映画やテレビドラマにも出演しましたが、その後は出演記録が途絶え、2008年に88歳で亡くなりました。

家族

父親は鉄道技師の進藤誠三郎。兄は映画美術監督の進藤誠吾、義兄は劇作家の阿木翁助。姪の子には、フジテレビアナウンサーの笠井信輔がいます。元夫は映画監督の藤田潤一。

主な出演作品

映画

からくり歌劇 (1936)
茶房の花々 (1938)
東京千一夜 (1938)
沃土万里 (1940)
君を夢見て (1951)
恋の応援団長(1952)
悪の愉しさ (1954)
終電車の死美人 (1955)
どたんば (1957)
飢餓海峡 (1965)
パルコフィクション(2002)

テレビドラマ

特別機動捜査隊 (1964)
[女殺し屋 花笠お竜]
太陽にほえろ! (1972-1986)
特捜最前線 (1977-1985)
赤い絆 (1978)
西遊記II (1980)
ザ・ハングマン (1981)
学校の怪談 春のたたりスペシャル(1999)
ハンドク!!! (2001)
* 実録 [福田和子]



不忍鏡子は、その長いキャリアの中で、様々な役柄を演じ、日本の映画・テレビ史に名を残しました。彼女の芸名が示すように、その演技は鏡のように多様で、観る者を魅了しました。

もう一度検索