不知行地還付政策

不知行地還付政策

不知行地還付政策は、室町幕府の第8代将軍、足利義政によって実施された政策で、主に寺社本所領と荘園の所領を回復する目的で行われました。義政は父である6代将軍の足利義教を模範に、将軍専制を強化しようとしました。彼は、元尾張守護代の織田郷広を復帰させたり、伊勢貞親や季瓊真蘂といった近臣を起用し、山名宗全や細川勝元によって支持された畠山政久に対抗して畠山義就を支援するなど、幕府内の権力基盤を強化しようとしていました。

背景と経過

長禄2年（1458年）の2月、義政は相国寺と鹿苑寺に対して、実効支配が及んでいない不知行地の還付を認める御教書を発布しました。これに続いて越前でも同様の所領還付が実施され、寺社は代官を派遣し、これを通じて自らの所領の直接支配を強化しようとしました。また、幕府も寺社領の代官に幕臣を任命し、寺社領への影響を及ぼしました。

この政策の背景には、守護勢力が寺社領へ介入してくることがありました。守護たちは、荘園を不正に横領したり、年貢の納入を請け負う代わりにしばしば収入を得るといった行為で権力を強化していました。このため、義政はこのような守護と家臣（国人）との関係を制限するため、不知行地還付政策を打ち出しました。

政治的な難航

しかし、この政策は実行に移す際、大きな障害に直面しました。例えば、越前では長禄合戦が勃発し、守護の斯波義敏と守護代の甲斐常治が権力を巡って争いを繰り広げている事例がありました。常治は幕府と近しい関係を構築しており、常治派が権力を強化することが問題視されました。この対立の中で、義敏は常治の横暴を訴えましたが、幕府は状況の複雑さから常治を直接非難できず、義敏は敗訴した末に出奔します。

長禄元年（1457年）には、義政の仲介によって義敏と常治の和解を試みましたが、所領の返還が進まないことから、さらなる対立が激化していきました。長禄合戦は、義敏と常治の派閥戦争に発展し、最終的には内戦に突入しました。義政は義敏の軍を関東に派遣する予定でしたが、和睦が決裂してしまいました。

この状況は次第に悪化し、義敏と常治の対立が続く中で、義政自身の権威も揺らいでいくことになりました。長禄3年には常治派が優勢を示しましたが、義敏は重要な戦いで敗北し、義政によって追放される事態となります。最終的には、守護と守護代が交代しましたが、義政の意図した関東征伐は行われないままとなりました。

結論

この一連の不知行地還付政策は、むしろ幕府の権威を揺るがし、施策の失敗へと繋がりました。政局が安定しない中で、武士や守護たちが自らの利益を追求する動きが強まると、義政の再び還付政策を試みるも、その効果は薄く、室町幕府全体の権利が低下してしまうことになりました。

特に応仁の乱の最中には、斯波氏が分裂し、義敏への寝返りといった新たな動きが見られました。最終的には、幕府の再建の試みも功を奏さず、室町時代の終焉の一因となりました。

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