寺社本所領

寺社本所領とは

寺社本所領とは、中世日本において、武家領に対して公家や寺社が所有していた荘園や所領のことを指します。武士が政治的な力を持つ以前には、領主（公家・寺社）の「本所領」という概念が存在していました。

成立の背景

12世紀末の鎌倉時代に入ると、鎌倉将軍の荘園・所領である関東御領や、既存の公家領・寺社領、そして公領である国衙領の区別が必要となりました。この際に、公家領・寺社領を「本所領」と呼ぶようになりました。

鎌倉幕府は、元寇という対外的な危機に直面し、本所領に住む人々を動員することで、ある程度の一円支配を確立しました。しかし、本所領に対して検断権などを完全に及ぼすことはできず、寺社興行法を制定するなど、御家人の権利よりも寺社領の権限を保護する政策を採りました。これは、神仏の加護によって対外的な危機を克服しようという期待の表れでした。

なお、「本所領」という言葉には、本来は寺社領も含まれていますが、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて、寺社領を他の本所領と区別するために「寺社領」と「本所領」を併記する用法が現れるようになりました。

室町幕府の政策と寺社本所領

室町幕府は、寺社領と公家領を合わせて「寺社本所領」と呼び、特に地頭やその他の預所が置かれていない本所の一円支配領（一円荘園）を本所一円支配地と呼びました。「寺社本所領」という言葉が初めて使われたのは、観応2年/正平6年（1351年）の幕府法令であるとされています。また、国衙領を寺社本所領に含めて使用する例もありました。

寺社本所領は、禁裏御料や殿下渡領（摂関家領）とともに保護の対象とされていました。しかし、南北朝時代の内乱の中で、兵糧を確保するために兵粮料所が設置されたり、半済令の対象となったりして、武家による押領が相次ぎました。

そのため、室町幕府は応安の半済令を定めて、寺社本所領の下地中分を強行する代わりに、一切の押領を認めないという姿勢を取りました。ただし、禁裏御料・殿下渡領・本所一円支配地は半済そのものが否定されました。また、幕府は実効支配が及んでいない所領の返還を認める不知行地還付政策を実施しましたが、戦国時代になると、これらの政策も有名無実化してしまいました。

戦国時代以降の寺社本所領

戦国時代に入ると、直務支配下にあった一部の例外を除き、ほとんどの寺社本所領は戦国大名や国人に奪われていきました。これにより、寺社本所領は衰退の一途をたどることになりました。

まとめ

寺社本所領は、鎌倉時代から室町時代にかけて存在した、公家や寺社が所有する荘園・所領でした。武家勢力の拡大とともに、その保護と変遷が繰り返されましたが、戦国時代には多くが武士の手に落ち、その歴史に幕を閉じました。

参考文献

島田次郎「寺社本所領」（『国史大辞典 7』吉川弘文館、1986年）ISBN 978-4-642-00507-4
稲葉伸道「寺社本所領」（『日本史大事典 3』平凡社、1993年）ISBN 978-4-582-13103-1

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