世知原線

世知原線

概要

世知原線は、日本の国有鉄道（国鉄）がかつて長崎県北松浦郡吉井町（現在の佐世保市）にあった肥前吉井駅（現在の吉井駅）と、同県北松浦郡世知原町（現在の佐世保市）にあった世知原駅の間を結んでいた鉄道路線です。主に沿線地域から産出される石炭を輸送する目的で建設・運営され、その歴史は1896年にまで遡りますが、1971年12月26日にその役目を終え、全線が廃止されました。廃止時の路線距離は6.7kmで、線路は単線・非電化でした。

歴史

世知原線の起源は、佐々川流域にあった炭鉱からの石炭運搬を目的として敷設された専用鉄道にあります。1896年（明治29年）、関西採炭株式会社によって佐々駅から世知原駅まで11.9kmを結ぶ九州松浦炭礦専用鉄道として建設されました。その後、運営主体は合資会社松浦炭礦を経て、1932年（昭和7年）には鉱業権者の個人経営となり、岡本彦馬専用鉄道と改称されました。当初、この専用鉄道は軌間762mmの軽便鉄道として運行されていました。

1933年（昭和8年）10月24日、佐世保鉄道がこの岡本彦馬専用鉄道を買収し、地方鉄道法に基づく路線として改めて開業させました。この際、佐々駅と世知原駅の間に吉井駅（後の肥前吉井駅）を設置し、佐々〜吉井〜世知原間を貨物線として営業を開始しました。翌1934年（昭和9年）2月11日には旅客営業も開始され、同時に祝橋停留場が新設されています。同年4月18日には吉井駅が肥前吉井駅に改称され、12月1日には御橋観音停留場が追加されました。

1936年（昭和11年）10月1日、佐世保鉄道は国に買収され国有化されました。これにより、世知原線を含む旧佐世保鉄道の路線は国有鉄道の松浦線の一部となります。1944年（昭和19年）4月13日には、佐々〜肥前吉井〜世知原間の軌間が1,067mmに改められ、これにより標準的な国有鉄道の路線網との直通が可能となりました。この改軌工事に伴い、御橋観音駅は廃止されています。

1945年（昭和20年）3月1日、松浦線の改軌工事の完成を受けて、肥前吉井〜世知原間（6.7km）は松浦線から正式に分離され、「世知原線」として独立した路線名が与えられました。

しかし、沿線の主要産業であった炭鉱が次第に閉山していくにつれて、世知原線の輸送量は減少の一途をたどります。特に貨物輸送は大きく落ち込み、旅客輸送も合理化のためキハ02形などのレールバスが投入されるほど衰退しました。1967年（昭和42年）6月1日には祝橋〜世知原間の貨物営業が廃止され、残る肥前吉井〜祝橋間の貨物輸送も1971年（昭和46年）4月1日に廃止されました。

すでに鉄道としての役割を大きく失っていた世知原線は、1968年（昭和43年）には、国鉄の経営改善のために選定された「赤字83線」の一つにリストアップされます。これは後に特定地方交通線に引き継がれることになる対象路線の前身ともいえるものです。そして、貨物営業の全面廃止に続き、1971年12月26日には全線（6.7km）が廃止されました。奇しくも、同じく旧松浦線から分岐していた臼ノ浦線も同日に廃止されています。

世知原線の廃線跡の一部は、現在、サイクリングロードとして整備されており、かつての鉄路の面影を残しながら、地域の人々に利用されています。

駅一覧（廃止時）

肥前吉井駅（現：吉井駅）
接続路線：松浦線（現：松浦鉄道西九州線）
祝橋駅
世知原駅

※全駅が長崎県北松浦郡内（現在の佐世保市）に所在していました。

関連事項

松浦鉄道西九州線（世知原線が分岐していた旧国鉄松浦線の一部を引き継いだ路線）
柚木線、臼ノ浦線（旧松浦線から分岐し、世知原線と同様に廃止された路線。臼ノ浦線は世知原線と同日廃止）
かつて特殊狭軌線（軌間762mm）として運行されていた時期があります。
専用鉄道時代に運行されていた機関車（1号・2号、3号・4号、3号（2代目）、5号）
* 日本の廃止鉄道路線一覧

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