両備軽便鉄道1号形蒸気機関車

1号形蒸気機関車の詳細

1号形蒸気機関車は、1914年に開業した両備軽便鉄道によって導入されたタンク式の機関車です。この機関車は、ドイツのヘンシェル社が製造したもので、車軸配置は0-4-0(B)という形式です。両備軽便鉄道では、正式な形式名を設けていなかったため、後の便宜上「1号形」と呼ばれることとなりました。

機関車の概要

同社が開業時に用意した機関車は、2気筒単式飽和式のタンク機関車が5両であり、その内訳は10トン級の60HP機関車2両と、9トン級の50HP機関車3両です。それぞれの機関車は、1913年に製造されました。これらの機関車は、カタログに掲載されているヘンシェル社の既成設計に基づいており、高田商会がその販売を手掛けていました。

10トン級の機関車（製造番号12340, 12341）は、ボイラーの直径が350mm、全長が160mm長く設計されており、シリンダーも若干大きめです。これによって、水と石炭の積載量も多くなっていました。一方、9トン級の機関車（製造番号12308から12310）は、同じく有効な設計ながらも、小型化されています。いずれの機関車もサイドタンクが石炭庫として使用されており、水タンクはウェルタンクが採用されています。

運行とその後の運命

これらの機関車は、後により大型の機関車が導入されるにあたり徐々に売却されていきました。1933年に国有化された際、唯一「1号形」のみが鉄道省籍を取得し、ケ130形と改番されました。その後、糸崎機関庫福山分庫に配属され、福塩線の改軌工事に従事しましたが、1934年には神高鉄道に貸し渡され、工事用に砂利を運ぶ業務に就きました。残念ながら、1936年には廃車となりました。

初めて売却された機関車は4号機で、これが東洋製糖に移籍し、南大東島で1964年まで運用されていました。続いて3号機と5号機は、1923年と1926年に阪田商会に売却され、その後の詳しい経歴は不明ですが、戦後に台湾で使用されることになりました。

残る2両は、1925年に愛媛鉄道に売却され、国有化後は別の形式として扱われる影響を受けました。これらの機関車は、国有化時においても本来は同じカテゴリーに含まれるべきものでしたが、形式が異なる扱いを受け、廃車は1936年に行われました。

主要諸元

• - 全長: 5,490mm（9トン機は5,330mm）
• - 全高: 2,800mm
• - 軌間: 762mm
• - 車軸配置: 0-4-0(B)
• - 動輪直径: 630mm
• - ボイラー圧力: 12.0kg/cm²
• - シリンダー径×行程: 235mm×300mm（9トン機は220mm×300mm）
• - 水タンク容量: 0.80m³（9トン機は0.75m³）
• - 燃料積載量: 0.36t（9トン機は0.32t）

保存状況

現在、4号機は東壷川公園に保存されており、その姿が多くの鉄道ファンに親しまれています。古き良き時代の蒸気機関車として、日本の鉄道史に名を刻んでいます。

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