中の丸

中の丸：毛利元就を支えた女性

中の丸（なかのまる、生年不詳 - 寛永2年9月25日（1625年10月26日））は、戦国時代から江戸時代初期にかけての女性で、安芸国の戦国大名・毛利元就の継室の一人として知られています。彼女は、安芸国佐西郡石内の国人領主・小幡氏の一族とされ、小幡義実の妹、または小幡元重の姉であるという説があります。ただし、近年では、小幡元重とされる人物が杉彦七元重であることから、中の丸は杉氏の一族であり、小幡氏は母方であるとする新説も提唱されています。

生涯

中の丸は、毛利元就の居城である吉田郡山城の中の丸という曲輪に住んだことから「中の丸」と呼ばれるようになりました。元就の死後は、四男・穂井田元清の居城である桜尾城の東の丸に移り住んだため、「東大方」や「東之御丸局」とも呼ばれています。また、出身から「小幡氏」とも称されました。

彼女は小幡氏に生まれ、時期は不明ながら、元就の正室である妙玖が亡くなった後に元就の継室となりました。元就との間には子はいませんでしたが、妙玖の死後、毛利氏の奥向きを仕切り、元就と他の継室との間の子や尾崎局、家臣たちに細やかな気配りができたとされています。特に、毛利輝元を実子のように可愛がり、その教育に尽力したことは特筆されます。元就に輝元の元服式を進言した記録も残っています。

晩年の元就は中の丸を深く信頼していたようで、元就から中の丸に送られた書状が多数残っています。これらの書状からは、元就が彼女に寄せる信頼の厚さがうかがえます。例えば、永禄5年（1562年）頃の書状には、彼女が「下くち」と「ひこもし」について心配しており、元就がその無事を伝えています。研究者の西尾和美は、「下くち」を大友氏からの防衛戦の最中であった杉重良の豊前松山城、「ひこもし」を杉彦七のことであると解釈し、彼女が杉彦七だけでなく杉重良とも縁戚関係にあったことを示唆しています。

元亀2年（1571年）に毛利元就が死去すると、中の丸は穂井田元清の居城である桜尾城に移り住みましたが、引き続き毛利家を支え、毛利輝元を補佐しました。輝元が中の丸に宛てた書状も残っており、二宮就辰や井上与七郎の身上について輝元に取り成しを行ったことが記されています。

天正15年（1587年）には、毛利輝元が長門国の検地を行った際に、中の丸の所領に対する検地後の措置について抗議し、輝元から釈明の書状を送られています。これは、彼女が単に奥向きを仕切るだけでなく、領地経営にも関与していたことを示唆しています。

寛永2年（1625年）9月25日、中の丸は長門国で亡くなりました。法名は「悟窓妙省大信女」。墓は長門国の大寧寺にありましたが、明治時代に東京に移されました。

関連作品

中の丸は、1997年のNHK大河ドラマ『毛利元就』に「妙」（たえ）という役名で登場し、宮本信子が演じました。

中の丸は、毛利元就の継室として、また毛利家を支えた女性として、その生涯は多くの謎に包まれていますが、彼女が毛利家、特に毛利輝元に与えた影響は計り知れません。

もう一度検索