中井王

中井王 - 平安時代初期の皇族

中井王（なかいおう）は、平安時代初期に存在した皇族であり、その生没年は不詳ですが、官位は正六位上・豊前介でした。彼は四世王以下と見なされており、天智天皇または天武天皇の子孫と考えられています。

経歴と活動

仁明天皇の時代に豊後介を務めた中井王は、任期が終了した後も豊後国に留まり、日田郡に私邸を構え、周辺の各郡に私営田を経営しました。彼の行動は、官人や民衆に対して多大な混乱をもたらしました。中井王は、郡司や百姓に対して暴行を加えるなど、暴力的な振る舞いを繰り返しており、その結果、人々は事態に動揺して安心することができませんでした。

加えて、彼は筑後国や肥後国まで出没し、そこで百姓を威圧して農業を妨げ、地域に深刻な影響を与えました。豊後国内では、過去に未進分の税を徴収する際、彼自身が貸し付けていた分も併せて回収しようとし、その過程で調庸の未進分に関して私物も含めて徴収し、その利息が倍増する事態を招きました。

このような状況を受けて、承和9年（842年）、豊後の国司は、延暦16年（797年）に下された法令に基づき、中井王を故郷に帰すように申し出ました。これに対し、太政官は恩赦をもって中井王の罪を許し、彼を本拠地に戻す決定を下しました。この時点での中井王の位階は正六位上でありました。

私営田の領主として活動しつつ、中井王は九州地方北部全域にその影響力を拡大させ、多くの歴史家によって、10世紀以降に顕著となる武士団の活動に先立つものとして評価されています。

従五位下に叙爵

文徳天皇の仁寿3年（853年）、中井王は従五位下に叙爵され、斉衡3年（856年）には清原益吉と共に文室真人姓を受けることとなります。この際、益吉は舎人親王の子孫と推定されており、同時に賜姓を受けた中井王もまた同族であったと考えられます。

中井王が豊後で勢力を持っていたこと、さらに仲井王と同一人物であるとの見解から、豊後清原氏を中井王の後裔とする説があります。また、彼の子孫が豊後大蔵氏の祖先であるという伝承も存在し、中井王の子が大蔵永弘に繋がるとされています。これらの事実は、当時の政治的権力や社会構造を知る上で重要な手がかりとなります。

このように、中井王はただの皇族としての存在にとどまらず、地域社会において複雑な影響力を持ち複数の歴史的な評価を受けている人物です。

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