中山定親

中山定親：室町時代を繋ぐ公家の生涯

中山定親（なかやま さだちか）は、室町時代に朝廷と室町幕府という二つの権力の間で重要な役割を果たした公家です。彼は中山家の9代目当主であり、特に6代将軍足利義教の側近として、朝廷と幕府間の意思疎通を円滑にするための伝奏という役職を務めました。また、彼自身が書き残した日記『薩戒記』は、室町時代中期の社会や政治情勢を知る上で欠かせない史料として高く評価されています。

室町時代の中山家

中山家は、定親の祖父である親雅の代から足利将軍家との関係を深めました。特に、3代将軍足利義満が権勢を拡大する中で、多く公家が義満に仕えるようになり、中山家もその一つでした。親雅や定親の父である満親も義満に仕え、中山家は将軍の側近公家として、室町幕府の中で一定の地位を確立していきました。

生涯と業績

定親は、応永8年（1401年）に満親の子として生まれました。彼の活動が具体的に確認できるのは、5代将軍足利義持の時代、応永年間の中頃からです。定親の日記『薩戒記』は応永25年（1418年）から始まっており、この頃に従四位上に叙せられたことがきっかけで日記を書き始めたとされています。

初期の頃、定親は主に朝廷や院に仕え、日記の内容も朝廷や貴族社会、有職故実に関するものが中心でした。特に、故実に関しては貴族社会からの信頼も厚く、様々な相談に乗ったり、儀礼や故実について意見を述べたりするなど、当時の知識人としても活躍しました。

永享8年（1436年）10月、定親は足利義教の命により、朝廷と幕府間の交渉役である御祈伝奏と禁中伝奏に任じられました。当時、公武間の交渉は勧修寺経興や広橋兼郷らが担当していましたが、彼らが失脚したため、定親がその後を引き継ぐことになったのです。伝奏として、定親は公武間の重要政務に関与し、義教の儀礼や寺社参詣にも同行するなど、側近公家としての地位を確立しました。義教からの信頼も厚く、義教政権の末期には、朝廷と幕府の間の公式な取次ぎは定親一人が行っていると認識されるほどでした。

嘉吉の乱で義教が暗殺された後も、定親は伝奏として重要な地位に留まりました。乱後、幕府の代表となった管領細川持之は、赤松満祐追討の綸旨を定親を通じて後花園天皇に奏上するなど、定親は依然として重要な役割を果たしました。また、義教期末から定親の管轄範囲は拡大し、息子の親通と共に「武家伝奏」「惣伝奏」と呼ばれるようになり、他の伝奏を統括する立場にもなりました。

文安4年（1447年）に春日社造営を巡って興福寺と東大寺が対立した際には、幕府の奉行が管領の意向を定親に伝え、天皇の勅裁を求めるなど、定親の影響力の大きさが窺えます。

文安5年（1448年）、定親は病気により出家し、息子の親通が伝奏を継ぎました。法名は祐繁。長禄3年（1459年）9月17日に生涯を閉じました。

官歴

応永28年（1421年）12月21日：参議に任じられる
応永29年（1422年）12月18日：従三位に叙される
応永34年（1427年）正月6日：正三位に叙される
永享9年（1437年）10月26日：従二位に叙される
永享13年（1441年）12月：権中納言に任じられる
嘉吉3年（1443年）3月16日：権大納言に任じられる
文安3年（1446年）正月29日：正二位に叙される
文安3年（1446年）4月29日：権大納言を辞任する
文安5年（1448年）6月23日：出家

系譜

父：中山満親（1371-1421）
母：伊予守満貞女
妻：不詳
男子：中山親通
男子：親輔
* 男子：賢深

中山定親は、室町時代という激動の時代において、朝廷と幕府という二つの権力の間でバランスを取りながら、政治や文化の発展に貢献した人物でした。彼の日記『薩戒記』は、当時の社会情勢や人々の生活を知る上で貴重な史料であり、彼の業績は後世に語り継がれています。

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