中山忠季

中山忠季：平安末期から鎌倉初期を生きた才能豊かな貴族

中山忠季（なかやま ただすえ）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての貴族です。内大臣・中山忠親の次男として生まれ、藤原北家師実流中山家の血を引いています。最終官位は正四位下・右近衛中将。

経歴

生年は不詳ですが、兄・中山兼宗より年下であることは明らかです。幼い頃に従姉である藤原忠子（松殿基房の正室）の猶子となりました。

後白河院政期に頭角を現し、元暦元年（1184年）に右近衛少将に任ぜられると、文治元年（1185年）に従四位下、文治4年（1188年）に従四位上、文治5年（1189年）には右近衛中将へと昇進を重ねました。摂政・九条兼実からの寵愛も厚く、建久元年（1190年）に兼実の娘・任子が後鳥羽天皇に入内し中宮に冊立されると、忠季は中宮権亮に任じられます。権亮としての功績が認められ、建久2年（1191年）には正四位下に叙されました。

建久6年（1195年）には蔵人頭に任じられますが、翌年体調を崩し、建久7年（1196年）1月20日に急逝。享年は不詳ですが、30歳前後であったと考えられています。忠季の死は、彼に期待を寄せていた九条兼実を深く嘆かせましたが、一方で藤原定家からは嫌悪感を持たれていたようです。

人物

和歌や笛にも通じていましたが、何よりも絵を得意としていました。その腕前は『古今著聞集』にも逸話が残されています。

私生活では、文治元年（1185年）以前に母方の伯父である藤原光長の娘を妻に迎えますが、後鳥羽天皇の寵愛を受けていた源在子の妹・督局（藤原時子）に熱烈な求愛をし、妻に迎えました。しかし、督局が産んだ嫡男・中山親平は忠季の死後に生まれており、彼は親子の対面を果たすことはできませんでした。

忠季の死後、妻たちはそれぞれ別の道を歩みました。光長の娘は藤原資家に嫁ぎ、藤原資季を産み、督局は土御門天皇即位後に典侍に任じられ、督典侍と呼ばれました。

『古今著聞集』に描かれた逸話

『古今著聞集』には、忠季の絵の腕前を巡る逸話がいくつか収録されています。

巻第三第101話： 県召除目の作法を巡る逸話で、藤原頼実が見事な作法を示した様子を忠季が絵に描いたとされています。
巻第八第325話： 督典侍に恋い焦がれた忠季が、雪の風景を描いた絵巻を贈ったことで、彼女の心を射止めたというロマンチックな逸話です。この絵巻がきっかけで二人は結ばれ、やがて子供を授かることになります。

官歴

時期不詳：正五位下、侍従
元暦元年（1184年）7月5日：右近衛少将
文治元年（1185年）正月6日：従四位下
文治4年（1188年）12月6日：従四位上
文治5年（1189年）11月13日：右近衛中将
建久元年（1190年）6月19日：中宮権亮（中宮：九条任子）
建久2年（1191年）正月5日：正四位下
建久6年（1195年）3月12日：服解。5月4日：復任。7月16日：蔵人頭、止権亮
建久7年（1196年）正月20日：卒去

系譜

父：中山忠親
母：藤原光房の娘
妻：藤原光長の娘
妻：藤原時子（能円の娘、督局）
男子：中山親平

中山忠季は、その才能と人間性において、多面的な魅力を持つ人物でした。彼の残した足跡は、平安末期から鎌倉初期の貴族社会を理解する上で貴重な手がかりとなります。

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