中村芝鶴 (2代目)

二代目 中村芝鶴：歌舞伎の至宝と豊かな人生

二代目中村芝鶴(1900-1981)は、明治末期から昭和期にかけて活躍した歌舞伎役者です。その華麗なるキャリアは、名門の血筋から始まり、時代劇、現代劇、さらにはテレビドラマへと広がりを見せました。

華麗なる舞台への道

東京浅草に生まれた芝鶴は、母方の家系が吉原の大店という華やかな環境で育ちました。1905年、わずか5歳で初舞台を踏み、その後は五代目中村歌右衛門に師事。1919年には『丹前朝比奈』で二代目中村芝鶴を襲名し、名題に昇進します。

若き日の芝鶴は、六代目尾上梅幸を敬愛し、その美貌を写したブロマイドは多くのファンを魅了しました。戦前には二代目市川左團次一座で活躍、戦後は渋い老女役から男役まで幅広い役柄をこなし、『籠釣瓶』の立花屋の女房、『瞼の母』の老いた夜鷹、『井伊大老』の水無部大臣、『天守物語』の舌長姥などを代表作としました。

時代の波を越えて

その活動は歌舞伎の枠に留まりませんでした。テレビドラマへの出演も積極的に行い、NHK大河ドラマには3作品に出演。特に、『春の坂道』での豊臣秀吉役は、71歳という大河ドラマ史上最年長の秀吉役として大きな話題を呼びました。

映画にも多数出演し、東宝、松竹作品にその姿を残しています。舞台では、『濹東綺譚』で永井荷風を演じ、そのソックリな演技で称賛を浴びました。森光子版『放浪記』にも出演するなど、現代劇にも積極的に挑戦しました。

後進の育成と豊かな執筆活動

晩年は、梨園以外の出身者にも指導の手を差し伸べ、松竹歌舞伎学校校長として坂東玉三郎ら多くの女形を育成しました。最後の舞台となったのは1981年2月、日生劇場での『天守物語』でした。同年9月、81歳で生涯を閉じました。

芝鶴は役者としてだけでなく、随筆家としても才能を発揮しました。吉原の思い出を綴った『大文字草』や『遊廓の世界』など、数々の随筆集を執筆し、歌舞伎界のみならず、その豊かな人生観を後世に残しました。

受賞歴と親族

その功績は高く評価され、1965年には伝統歌舞伎保存会会員に認定、1968年には紫綬褒章、1974年には勲四等旭日小綬章を受賞しました。

作品リスト

芝鶴の出演作品は多岐に渡ります。代表的な作品として、『阿部一族』、『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』、『濹東綺譚』、『花の生涯』、『赤穂浪士』、『侍』、『虹』、『春の坂道』、『残菊物語』などがあります。

まとめ

二代目中村芝鶴は、その華麗な芸と豊かな人生で、歌舞伎界に大きな足跡を残しました。名門の出身でありながら、常に挑戦を続け、時代を超えて愛される役者として、今もなお人々の記憶に刻まれています。その活躍は、歌舞伎の枠を超え、テレビ、映画、そして現代劇にまで及びました。そして、後進の育成にも力を注ぎ、歌舞伎界の発展に貢献しました。その多才ぶりは、役者としてだけでなく、随筆家としても才能を発揮したという事実からも窺えます。芝鶴の生涯は、まさに歌舞伎の至宝と豊かな人生の物語そのものです。

もう一度検索