中根香亭

中根香亭

中根香亭（なかね こうてい、天保10年2月12日（1839年3月26日） - 大正2年（1913年）1月20日）は、幕末から明治初期にかけて活躍した漢学者、随筆家です。本名は曾根淑（きよし）。

生涯

江戸の下谷長者町（現在の東京都台東区上野）に生まれ、幼少の頃に中根家の養子となりました。若い頃は伊庭秀業に心形刀流剣術を学びましたが、安政年間に脚の病を患い、武術から離れることになります。その後は儒学を亀田綾瀬門下の清水純斎に、一絃琴を真鍋蓁斎に学びましたが、基本的には独学で学問を修めました。

1864年には幕臣として長州征討に従軍。大政奉還後の鳥羽・伏見の戦いにも参加し負傷しています。その後、勝海舟の指揮下に入りますが、勝の姿勢に不満を抱き、多賀上総守に従って軍艦に乗り込むも暴風により断念。江戸に戻ります。1868年には友人の乙骨太郎乙の従者として駿河へ赴き、沼津兵学校の教官となりました。新政府に徴用され陸軍少佐に任命され、佐賀の乱では征討軍の参謀少佐を務めました。

1876年に病により辞職。文部省に勤務し、依田学海と知り合います。その後、金港堂に招かれ、総支配人兼編輯長として新文学の紹介に尽力しました。二葉亭四迷『浮雲』、田辺龍子『藪の鶯』、山田美妙の小説集『夏木立』などを発表し、幸田露伴の『露団々』を掲載するなど、当時の文壇に大きな影響を与えました。

妻と息子に先立たれてからは各地を遊歴し、晩年は静岡県興津に居を構えました。1913年1月に逝去。享年75歳。遺言により興津の浜で火葬され、遺骨は残されませんでした。墓所は染井霊園にあります。

人物

中根香亭は、当時の武士としては晩学でしたが、書画、俳句、謡曲、和歌、天文など多岐にわたる趣味を持っていました。彼の著書『兵要日本地理小誌』は、渋江抽斎の妻である五百が常に座右に置いていたと伝えられています。森銑三は、香亭の詩文を「高士の文学」と評しました。

著書

『兵要日本地理小誌』（1873年）
『慶安小史』（1876年）
『日本文典』（1877年）
『香亭雅談』（1886年）
『新撰漢文読本』（1891年）
『頭書平治物語』（1892年）
『行脚非詩集』（1905年）
『歌謡学数考』（1908年）
『香亭蔵草』（1913年）
『香亭遺文』（1916年）

門下生

小笠原長生
田口卯吉
島田三郎
吉田次郎
伊庭想太郎

関連人物

中村不折：中根の旧居を購入し、一部を保存した。


中根香亭は、幕末から明治にかけての激動の時代を生き、武士でありながら文人としても才能を発揮した人物でした。彼の残した著書や、彼を慕った人々との交流は、今もなお私たちに多くの示唆を与えてくれます。

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