乙骨太郎乙

乙骨太郎乙（おつこつ たろうおつ）

概要

乙骨太郎乙は、天保13年（1842年）に江戸で生まれ、大正11年（1922年）7月19日に没した、幕末から明治にかけての洋学者・翻訳家です。幼少より漢学を学び、その後、蘭学、英語を修得しました。幕府の蕃書調所や開成所、新政府の大蔵省などで翻訳や教育に携わり、日本の近代化に貢献しました。

生涯

幕末

1842年、儒学者である乙骨耐軒の長男として江戸に生まれました。昌平坂学問所で学び、箕作麟祥のもとで蘭学と英学を修めました。1860年には蕃書調所書物御用出役を命じられ、翻訳業務に従事しました。1864年には開成所で教授手伝から教授へと昇進し、後進の育成にも尽力しました。1867年には外国奉行調役となり、幕府の外交にも関与しました。

明治維新後

維新後は、徳川家と共に静岡へ移り、沼津兵学校で英語を教えました。1874年には静岡学問所教授となりました。1872年には新政府に招聘され、大蔵省翻訳局に勤務しました。また、尺振八と共に共立学舎を開き、教育者として活躍しました。1875年に翻訳局を退官した後は、1878年から海軍省御用掛として明治23年まで勤務しました。

晩年は、旧幕臣たちを集めて「昔社」を結成し、漢詩を詠むなどして余生を過ごしました。墓所は文京区の寂圓寺にあります。

業績

乙骨太郎乙は、翻訳者として海外の文献を日本に紹介するとともに、教育者として多くの人材を育成しました。特に、英語教育の分野で大きな功績を残し、日本の近代化に大きく貢献しました。また、国歌「君が代」の歌詞の提案者の一人とも言われています。

執筆活動

海外記事の紹介（『学芸志林』）
漢訳『地質浅釈』の訓点書

家族・親族

乙骨家は、幕末から明治にかけて多くの人材を輩出しています。

父：乙骨耐軒（幕臣、漢学者）
弟：乙骨亘（上田絅二、上田敏の父）
弟：乙骨兼三（榎本武揚軍に参加後、教師、ハワイ移民監督官）
妹：ちか（遠藤信古の妻）
妹：こう（吹田鯛六の妻）
妻：つぎ（杉田成卿の娘、杉田玄白の曾孫）
長男：夭折
二男：乙骨半二（検事、弁護士）
三男：乙骨三郎（東京音楽学校教授、作詞家）
五男：乙骨五郎（成蹊高等学校教授、のち学長）
長女：まき（江崎政忠の妻）
次女：さだ（古山栄三郎の妻）
三女：ひさ（小室龍之助の妻）
養女：タキ（甲野棐の妻）

参考文献

永井菊枝『小伝 乙骨家の歴史―江戸から明治へ』2006年。ISBN 978-4-43-407741-8。
沢鑑之丞『海軍七十年史談』文政同志社、1942年、339-343頁。NDLJP:1062905。

関連項目

蕃書調所
ジョン・ウィリアム・フェントン
君が代

外部リンク

デジタル版 日本人名大辞典+Plus『乙骨太郎乙』 - コトバンク

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