中浦ジュリアン

中浦ジュリアンの生涯

中浦ジュリアンは、1568年頃に肥前国（現在の長崎県）で、小佐々純吉の息子として生まれました。幼名は小佐々甚吾。洗礼を受けてジュリアンという名を得ました。彼は、激動の時代を生きたキリシタンであり、天正遣欧少年使節の副使としてローマに派遣されたことで知られています。その生涯は、信仰と殉教の物語として語り継がれています。

生い立ちと家系

中浦ジュリアンは、肥前国の中浦城主である小佐々純吉の息子として生まれました。小佐々氏は、宇多源氏を祖とする佐々木氏の末裔で、戦国時代には西彼杵半島の沿岸を支配する有力な領主でした。小佐々水軍を率いて海上交易や関料徴収で栄え、中浦は水軍の拠点の一つでした。

幼少期には、父の純吉と大伯父の純俊が戦で討ち死にしたため、大村純忠に引き取られ、その息子である大村喜前（後の大村藩初代藩主）の小姓として育てられました。その後、1580年に有馬のセミナリヨに入学し、キリスト教の教育を受けました。

天正遣欧少年使節

1582年、ジュリアンはイエズス会の巡察師アレッサンドロ・ヴァリニャーノの提案により、ローマへ派遣される天正遣欧少年使節の副使に選ばれました。使節団は、ジュリアンを含む4人の少年で構成され、日本のキリスト教をローマ教皇に紹介し、教皇の祝福を受けるという重要な使命を担っていました。

長旅の末、1585年にローマに到着した使節団は、ローマ教皇グレゴリウス13世に謁見しました。ジュリアンは到着直前に病に倒れましたが、教皇は彼を気遣い、特別に謁見の機会を与えました。教皇はジュリアンの病状を心配し、自ら医師を派遣して治療に当たらせました。その後、使節団は新教皇シクストゥス5世にも謁見し、ローマ市民権を授与されるなど、手厚い歓迎を受けました。

使節団はヨーロッパ各地を訪問しましたが、ジュリアンは病気が再発し、体調が優れないこともありました。しかし、その都度多くの人々に助けられ、キリスト教への信仰を深めました。

帰国と司祭叙階

1590年、約8年間の長旅を終えて日本に帰国したジュリアンは、故郷で歓迎を受けました。その後、イエズス会に入会し、1608年には司祭に叙階されました。彼は、日本各地で布教活動を行い、多くの人々にキリスト教を広めました。

キリシタン禁教と殉教

1614年、江戸幕府はキリスト教を禁じ、宣教師や信徒を追放しました。多くの信徒が海外へ逃れる中、ジュリアンは日本に残り、潜伏しながら布教活動を続けました。彼は、各地のキリシタンを訪ね歩き、信仰を支えました。

1632年、ジュリアンは捕らえられ、長崎で拷問を受けましたが、棄教を拒否しました。1633年、彼は他のキリスト教徒と共に、西坂で穴吊るしの刑に処せられました。穴吊るしは、全身の血が頭に集まり、激しい苦痛を伴う残酷な刑でした。ジュリアンは4日間の苦しみの末、殉教しました。享年65歳でした。最期の言葉は「この大きな苦しみは神の愛のため」であったと伝えられています。

列福

2008年、ローマ教皇ベネディクト16世は、中浦ジュリアンを福者として列福しました。これは、天正遣欧少年使節の一員としては初めての列福でした。

中浦ジュリアンは、激動の時代に信仰を貫き、殉教した偉大な人物として、今も多くの人々に敬愛されています。

記念碑等

中浦ジュリアンを記念する碑や像は、長崎県西海市を中心とした各地に建てられています。これらの記念碑は、彼の信仰と勇気を後世に伝えるために、重要な役割を果たしています。

中浦ジュリアン顕彰之碑：中浦ジュリアン記念公園
中浦ジュリアン像：中浦ジュリアン記念公園
中浦ジュリアン像：西海スポーツガーデン体育館前
中浦ジュリアン像：カトリック島原教会前
多以良の小佐々氏墓所（長崎県指定史跡）
小佐々水軍顕彰之碑
小佐々學博士顕彰之碑
天正遣欧少年使節顕彰之像

関連作品

中浦ジュリアンを題材とした映画、小説、漫画、オペラなどの作品も存在し、彼の生涯は様々な形で語り継がれています。

映画：『アジアの瞳』
小説：『西海の聖者』、『少年賛歌』、『遥かなるローマ』
漫画：『小学館版学習まんが 少年少女人物日本の歴史　天正少年使節』、『天正遣欧少年使節　光の彼方へ』
オペラ：『忘れられた少年−天正遣欧少年使節』

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