中瀬正幸

中瀬正幸：空のエース、その生涯

中瀬正幸（なかせ まさゆき）は、1918年（大正7年）7月1日、徳島県徳島市に生まれました。1942年（昭和17年）2月9日に戦死するまでの短い生涯を、大日本帝国海軍のパイロットとして空に捧げました。最終階級は一等飛行兵曹でしたが、その戦功により二階級特進し、飛行特務少尉となりました。撃墜数は18機を数え、エース・パイロットとしてその名を轟かせました。

飛行への道

1934年（昭和9年）6月、中瀬は「第5期飛行予科練習生」（乙飛）として横須賀海軍航空隊に入隊しました。1938年（昭和13年）3月に飛行練習生課程を修了し、三等空曹に昇進。その後、大村海軍航空隊、第14航空隊と配属され、日中戦争（支那事変、日華事変）に出動しますが、空戦の機会は訪れませんでした。その後、横須賀航空隊勤務を経て、1940年（昭和15年）7月、第12航空隊の零戦隊として漢口王家墩飛行場に進出しました。

初陣と成都攻撃

1940年（昭和15年）10月4日、中瀬は初めての実戦となる第一次成都攻撃に参加しました。横山保大尉の指揮する第2編隊の一員として出撃した中瀬は、太平寺飛行場で敵機に低空銃撃を加えましたが、目標は燃え上がりませんでした。そこで、中瀬は東山市郎空曹長らとともに強行着陸を決行します。地上部隊の激しい銃撃の中、敵機への攻撃を試みましたが、最終的には帰還を余儀なくされました。この際、被弾により機体が損傷するも、大石英男二空曹の励ましにより、九死に一生を得て漢口へ帰還しました。

数々の撃墜記録

1941年（昭和16年）3月14日、再び成都攻撃に参加した中瀬は、I-153戦闘機2機を撃墜しました。さらに、双流飛行場上空での戦闘では、5機（うち1機は不確実）を撃墜する戦果を挙げました。同年5月26日には、南鄭・成県・天水飛行場総攻撃に参加し、鹽関上空で第5大隊のI-153を3機撃墜。ともに編隊を組んだ中仮屋国盛三空曹の撃墜数と合わせ、計5機の撃墜を記録しました。この一連の戦闘で、中瀬の卓越した空戦技術は、多くの関係者に知られることになりました。

太平洋戦争と最期

1941年（昭和16年）9月、中瀬は第3航空隊に転属し、同年12月8日の太平洋戦争開戦を迎えます。フィリピン島攻撃、蘭印航空戦に参加し、戦果を重ねていきました。しかし、1942年（昭和17年）2月9日、セレベス島マカッサル付近で装甲車を銃撃中に被弾し、戦死。享年23歳という若さでした。その功績により、二階級特進で飛行特務少尉に任ぜられ、正八位が贈られました。

人柄と評価

中瀬は、温和でスポーツ万能な人物だったと伝えられています。常に率先して行動し、その空戦技術は天才的であったと評されています。彼の勇敢な戦いぶりと、温厚な人柄は多くの人々に語り継がれ、今日においてもその功績が称えられています。

中瀬正幸の短い生涯は、まさに激動の時代を駆け抜けたものでした。その功績は、日本の航空史に深く刻まれ、後世に語り継がれることでしょう。

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