中華人民共和国のスポーツ

中華人民共和国のスポーツ



中華人民共和国におけるスポーツは、1949年の建国以来、国家主導で発展を遂げてきました。国民の健康増進、労働力・国防力の向上を目的とし、大衆スポーツの普及と競技スポーツの強化を両輪として推進されています。

歴史



1952年のヘルシンキオリンピック参加に向け、スポーツ競技力向上の動きが活発化しました。1949年の「中国人民政治協商会議」で「国民体育の提唱」が政策方針に盛り込まれました。1951年にはラジオ体操の普及が始まり、1952年には競技スポーツの強化が国家主導で行われるようになりました。中央人民政府体育委員会（現：国家体育総局）が設立され、スポーツ事業の管理・運営が開始されました。

ソ連のスポーツ行政を参考に制度が構築され、1951年には初のナショナルチームであるバスケットボールチームが発足しました。1950年代は、大衆スポーツの普及が中心でしたが、1959年の世界卓球選手権で容国団が優勝したことをきっかけに、競技スポーツへの関心が高まりました。1960年代以降、選手育成体制が本格化しました。しかし、近年では幼年期からの選手育成に対し、西欧諸国から児童虐待との指摘も出ています。

1954年以降、二つの中国問題によりオリンピック参加が中断され、1958年には国際オリンピック委員会（IOC）との関係を断絶しました。文化大革命の影響もあり、スポーツ振興は停滞しましたが、1971年の名古屋での世界卓球選手権参加（ピンポン外交）を機に復興に向かいました。1986年には「スポーツ体制の改革に関する決定」が制定され、スポーツ強国への基盤構築が加速しました。1993年の市場経済導入後、1994年にはサッカーのプロ化を皮切りに、スポーツの産業化が進みました。また、スポーツくじ管理センターも設置され、財源確保も行われました。

2002年には、バスケットボールの姚明がNBAに参戦するなど、海外プロリーグで活躍する選手も現れました。2007年には、姚明と易建聯の試合が1億人以上を動員するなど、スポーツへの関心はますます高まりました。2008年の北京オリンピック開催に向けて法整備が進められ、オリンピック標識保護条例や反ドーピング条例が制定されました。また、環境改善計画も実施されましたが、大気汚染対策として周辺工場の操業停止や、強硬な交通規制などが行われました。北京オリンピックでは、中国は金メダルを多数獲得し、スポーツ大国としての地位を確立しました。2022年には体育法が改正され、他国による主権侵害への対抗措置が盛り込まれました。

スポーツ組織



国家体育総局は、国務院直属の行政機関としてスポーツ振興を主導しています。その配下には13の機関局、43の組織があります。この体制はソ連のスポーツ体制を参考に「挙国体制」と呼ばれ、スポーツ関連法整備、発展計画策定、競技スポーツ強化、不正撲滅、国際スポーツ交流など幅広い任務を担っています。教育部は学生の競技スポーツを支援し、各地方政府も地方体育局を設置しています。

スポーツ統括団体




全国運動会



全国運動会は1959年から4年に1度開催される国内最大の総合スポーツ大会です。前身は清末期に始まり、中華民国時代に全国運動会と改称されました。YMCA主導で1910年に開催された競技会が、第一回全国運動会と追認されました。競技種目は陸上競技、サッカー、テニス、バスケットボールなどが始まりでした。中華民国時代は政情不安で中断もありましたが、中華人民共和国成立後、4年に1度開催されるようになり、参加選手も1万人を超える大規模な大会へと発展しました。

女性のスポーツ参加



中国における女性のスポーツ参加は、儒教の教えや纏足の風習などから困難を極めました。1907年に「女子学童章程」が公布され、女性のスポーツ参加が推奨され、1908年には中国女子体育学校が設立されました。1916年に全国運動会で初めて女子バスケットボールが公開競技として披露され、その後1929年に正式種目に取り入れられました。1931年には女子バスケットボールチームが日本遠征を行い、国際試合を経験しました。1957年には鄭鳳栄、1971年には呉浮山が走り高跳びで世界新記録を樹立しました。1980年代には女子バレーボールチームが世界を席巻し、その実力は世界最強と称されるほどでした。

人気のスポーツ



2017年の報道によると、中国で最も人気のあるスポーツはバスケットボールで、以下、サッカー、卓球、体操競技、バドミントン、水泳と続きます。特にバスケットボールは、NBA人気も高く、約3億人のファンがいると言われています。

陸上競技



陸上競技は、YMCAがスポーツを伝えた初期から行われています。1890年に最初の運動会が開かれ、短距離走、長距離走、走り高跳び、走り幅跳びなどが実施されました。1953年にナショナルチームが組織され、1978年に中国陸上競技連盟(CAA)が国際陸上競技連盟(IAAF)に加盟しました。2000年代までは、国家主導の優遇政策により個人能力に依存した選手育成が行われていましたが、プロ化が進むにつれ、才能ある個人の獲得が課題となりました。近年は、科学的なトレーニング研究も進められています。2021年には蘇炳添が東京オリンピックで男子100mアジア新記録を樹立しました。

水泳



中国は1952年に国際水泳連盟(FINA)に加盟し、1956年に中国水泳協会が設立されました。1980年に国際連盟に復帰し、1992年のバルセロナオリンピックで初の女子競泳金メダルを獲得しました。2012年のロンドンオリンピックでは、孫楊が男子競泳初の金メダルを獲得しましたが、後にドーピング問題で出場停止処分を受けました。飛込競技では、常にメダルを獲得しており、2022年の世界水泳選手権では、全種目で金メダルを獲得しました。

球技



  • - アメリカンフットボール: 2012年に青少年向けスクールが開校し、国内の認知度が向上しました。プロリーグも発足しています。
  • - 野球: 1864年に伝えられましたが、文化大革命で一時中断し、1974年に再開しました。プロリーグも設立されましたが、その後再編されました。WBCにも参加しています。
  • - クリケット: 香港で盛んで、2004年に中国クリケット協会が国際クリケット評議会(ICC)に加盟しました。
  • - サッカー: 中国で最も人気のあるスポーツであり、プロ化も進んでいます。海外の有名選手も多数獲得しましたが、国内育成の遅れも指摘されています。
  • - テニス: 1953年に中国テニス協会が発足し、国際テニス連盟(ITF)に加盟しました。2004年からはチャイナオープンが開催されています。李娜選手が全仏オープンで優勝するなど、国際的にも活躍しています。しかし近年、彭帥選手の事件でWTAが中国での大会開催を中止しました。
  • - ラクロス: 2012年に中国ラクロス協会が発足し、ワールドラクロス(WL)に加盟しました。世界選手権にも出場しています。

屋内競技



  • - バスケットボール: 中国で最も人気のあるスポーツの一つです。姚明がNBAで活躍して以来、人気が高まりました。国内プロリーグも存在し、約3億人がプレーしていると言われています。
  • - 卓球: 1959年の容国団の優勝を機に国民的なスポーツとなりました。1988年のソウルオリンピックで正式種目となり、中国は圧倒的な強さを誇っています。近年は、強すぎるため人気が陰りを見せ始めたため、「養狼計画」を実施し、国際的な普及を図っています。
  • - バレーボール: 女子代表が国際大会で多くのメダルを獲得しています。中国バレーボールリーグも設立され、普及に努めています。
  • - バドミントン: 東南アジアからの帰国者が普及させ、中国は世界でも有数の強豪国です。女子ダブルスでは世界1位も輩出しています。
  • - 体操: 2000年のシドニーオリンピックで男子団体総合で初優勝しました。2008年の北京オリンピックでは、男女ともに団体総合で金メダルを獲得しています。

冬季競技



  • - バンディ: 競技人口では世界2位のウィンタースポーツです。2014年に中国バンディ連盟が設立され、世界選手権にも出場しています。
  • - カーリング: 1995年に日本から伝えられ、2002年に中国カーリング協会が世界カーリング連盟(WCF)に加盟しました。2009年には世界選手権で優勝しました。
  • - フィギュアスケート: 1950年代から振興に取り組んでおり、ペア競技でオリンピック金メダルを獲得しました。国内選手権や国際大会も開催されています。

モータースポーツ



  • - 自動車レース: マカオグランプリが長く開催されており、1994年には中国本土でも国際モーターレースが開催されました。2004年からはF1中国グランプリも開催されています。馬青驊選手は、F1カーを運転した初の中国人ドライバーとなりました。

その他スポーツ



  • - 競技武術: 古くから中国に伝わる武術は、1931年の全国運動会で正式種目となりました。国際的な普及活動も積極的に行われ、国際武術連盟(IWUF)も組織されましたが、オリンピック種目には採用されませんでした。
  • - 射撃競技: 建国初期から行われ、1984年のロサンゼルスオリンピックで許海峰選手が金メダルを獲得し、中国のオリンピック史上初の金メダリストとなりました。
  • - マインドスポーツ: 囲碁、シャンチー、チェスなどのボードゲームも国家体育総局が管轄しています。

国際スポーツ施設



中国では、2008年の北京オリンピックに向けて、多くの競技施設が建設されました。また、14か所のナショナルトレーニングセンターも設置され、各競技の強化が行われています。

脚注



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