中華民国大総統

中華民国大総統とは

中華民国大総統とは、中華民国北洋政府期における国家元首の名称です。中国語では「大総統」または「総統」といい、これは大統領を意味します。この記事では、1912年1月1日の中華民国臨時政府成立から、1928年に国民政府が中国を統一するまでの大総統について解説します。1947年の中華民国憲法施行以降の総統については、中華民国総統の項目を参照してください。

大総統設置の経緯

1912年1月1日に成立した中華民国臨時政府において、国家元首として「臨時大総統」が設置されました。1913年10月10日には、正式に「中華民国大総統」が国家元首として設けられました。しかし、1925年に国民政府が発足し、1928年に国民政府が中国を統一すると、中華民国の元首の地位は国民政府主席に取って代わられました。

大総統の権限

大総統の権限は、時代によって変化しました。以下に、主要な約法における大総統の権限について解説します。

中華民国臨時約法（1912年）

1912年に公布された中華民国臨時約法では、臨時大総統について以下の権限が定められました。

臨時政府の代表、政務の総覧、法律の公布
法律の執行、命令の発令
全国の陸海軍の統帥
官吏の制度・規則の制定（参議院の議決が必要）
文武職員の任免（国務員、外交大使・公使の任命は参議院の同意が必要）
参議院の同意を経て、宣戦・講和及び条約の締結
法律に従って戒厳令を宣告
全国を代表して外国の大使・公使を受け入れ
法律案を参議院に提出
勲章並びにその他の栄典を授与
大赦・特赦・減刑・復権を宣告（大赦は参議院の同意が必要）

これらの職権は、1913年に大総統職が正式に設置された後も、大総統の職権として継承されました。

中華民国約法（1914年）

1914年、袁世凱は臨時約法を廃止し、新たに中華民国約法（「民国三年約法」）を公布して、大総統の権限を強化しました。主な変更点は以下の通りです。

大総統は国家元首として統治権を総攬
大総統は国民に対して責任を負う
立法院の召集、開会・停会・閉会の宣告、参政院の同意による立法院の解散
法律案と予算案を立法院に提出
法律を執行し、法律の委任に基づいて命令を発布（ただし、命令で法律を変更することは不可）
緊急時に参政院の同意を得て、法律と同等の効力を持つ大総統令を発布（次期立法院の追認が必要）
官制・官規を制定、文官・武官を任免
開戦と講和を宣告
陸海軍の大元帥として全国の陸海軍を統帥、陸海軍の編制および兵額を定める
外国の大使・公使を接受
条約を締結（領土の変更および国民の負担が増加する条款は立法院の同意が必要）
法律により、戒厳令を宣告
爵位・勲章およびその他の栄典を授与
大赦・特赦・減刑・復権を宣告（大赦は立法院の同意が必要）
大総統が辞職または職務の遂行が不可能なときは、副総統がその職権を代行
立法院が議決した法律を否認した場合、立法院が再審議できる。ただし、大総統が内政・外交において重大な危害・障害があると認めたときは、参政院の同意を得て、大総統は法律を公布しないことが可能

1916年に袁世凱が没すると、後継大総統の黎元洪によって中華民国約法は廃止され、元の中華民国臨時約法に戻されました。

歴代大総統

現在の中華民国政府は、1913年7月第二革命以降の袁世凱政権ならびに軍閥政府は不法であったと位置づけています。

北京政府において、正式に大総統に就任したのは黎元洪、徐世昌、曹錕のみです。馮国璋（代理大総統）、段祺瑞（臨時執政）、張作霖（安国軍政府大元帥）は、国家元首に相当しますが、大総統に正式就任していません。また、蔣介石は1925年から1928年にかけての北伐期間、国民革命軍の総司令を務めました。

関連項目

中華民国の元首
* 中華人民共和国主席

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