中越国境紛争

中越国境紛争（両山戦役）

中越国境紛争、特に老山・者陰山を巡る戦いは、中越戦争終結後に発生した両国間の大規模な軍事衝突です。中国では「両山戦役」と呼ばれています。

戦闘の経緯

この紛争は、1984年4月2日、中国人民解放軍による老山のベトナム軍陣地への砲撃をきっかけに始まりました。戦闘は三段階に分けられ、激しい攻防が繰り広げられました。

第一次戦闘 (4月2日～5月15日): 中国軍の大規模な砲撃により開始され、その後、中国軍は老山・者陰山の大部分を占拠しました。
第二次戦闘 (6月12日～7月10日): ベトナム軍は老山の再占拠を試みましたが、中国軍の多連装ロケット砲による反撃で阻止されました。双方に多数の死傷者が出ました。
第三次戦闘 (7月12日～7月14日): ベトナム軍は6個連隊を投入し、白兵戦を試みましたが、中国軍の圧倒的な火力により撃退されました。この戦闘でベトナム軍は多数の死者を出し、老山陣地の奪還を断念しました。

紛争の背景

紛争の背景には、中越国境の未確定問題と、両国が老山・者陰山一帯の戦略的な重要性を認識していたことが挙げられます。中越戦争後、ベトナム軍は老山・者陰山に強固な陣地を構築していました。一方、中国では鄧小平が軍制改革を進めており、この紛争は、その効果を試す絶好の機会と捉えられました。また、中越戦争での撤退により低下した中国軍の威信回復も、この紛争の目的の一つでした。

軍事的影響

両山戦役は、中国軍が砲兵の火力で陣地を維持できた点が特徴的でした。ベトナム軍は、地形の不利をものともせず、肉弾攻撃を敢行しましたが、結果的に大きな犠牲を払うことになりました。この戦いを通じて、中国軍は補給体制の弱さを露呈しましたが、ベトナム軍の高い士気も明らかになりました。この後、中国は南沙・西沙諸島への進出を強め、1988年にはジョンソン南礁でベトナムと再度交戦し、勝利を収めました。

政治的影響

中国: 両山戦役の勝利は、中国国内で鄧小平指導部の功績として大々的に宣伝され、国威発揚に利用されました。

ベトナム: 中国の勝利に沸く様子を見て、ベトナム国内では中国への報復心理が再認識されました。また、カンボジアでの戦闘による損失も重なり、ベトナム社会には厭戦機運が高まりました。これにより、親ソ連派の指導体制への疑問が顕在化し、後に親中派が復権する契機となりました。

その後の状況と中越関係の改善

1985年から1988年にかけて、中国軍は経済改革と軍制改革の成果により力を増し、ベトナム軍との差は拡大しました。中国軍は中越国境を訓練の場とし、実戦経験を積みました。1988年、ベトナムの指導者が死去し、ソ連軍がアフガニスタンから撤退すると、ベトナムは中国との関係改善を模索し始めました。1989年、中越間の貿易が再開し、両国関係は急速に修復に向かいました。中国軍は老山・者陰山から撤退し、1989年5月までに撤兵を完了しました。その後、両国間で小規模な衝突も発生しましたが、軍を投入しない形で終結し、関係は安定化しました。

関連事項

中越戦争
昆河線
ジョンソン南礁
スプラトリー諸島海戦
インドシナ半島
西沙諸島
南沙諸島

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