丹比乙女

丹比乙女について

丹比乙女（たじひ の おとめ、生没年不詳）は奈良時代に活躍した女性で、姓は宿禰です。彼女は外従五位下の位階にあり、当時の日本の皇族と密接に関わっていた人物として知られています。

出自と一族の背景

丹比乙女は、皇別の多治比真人とは異なり、彼女の出自は『新撰姓氏録』の「右京神別」に記載されています。そこには「火明命三世孫天忍男命之後也」とあり、彼女の一族の系譜が記されています。氏名の由来は、仁徳天皇の治世に皇子の多治比瑞歯別尊（あとに反正天皇となります）に由来し、「丹治部」という名称が各地に定められたことから名付けられたといいます。また、丹比乙女の出身は河内国丹比郡（現在の大阪府松原市や堺市美原区を含む地域）で、一族はここを中心に栄えていました。

丹比連という別の系統も存在し、河内国神別によれば「火明命之後也」と記されています。また、和泉国神別には天穂日命の子孫である天香山命を祖とする丹比連も存在するとされています。これらの情報から、彼女が非常に歴史的な背景と重要性を持つ人物であったことがわかります。

記録に残る事件

丹比乙女は、その名が記録に残る事件に関与しています。神護景雲3年（769年）、不破内親王が息子の氷上志計志麻呂を皇位につけるための陰謀を企て、その過程で他の女性たちと共に称徳天皇に対する呪詛を行ったとされています。不破内親王および志計志麻呂が皇位を得るために、天皇の髪の毛を盗み、髑髏と共にまじないを行ったという記録が残っています。

この事件において、丹比乙女が告発者であったことが『続日本紀』の宝亀2年（771年）8月の記述によって明らかにされています。乙女は不破たちと共謀した女性たちを訴えたとされ、事件は大きな波紋を呼びました。しかし、後に彼女の申し立てが虚偽であったことが判明し、姉女たちは冤罪であったことが明らかになります。 これにより、朝廷は丹比乙女の外従五位下という位記を剥奪しました。

その後の人生

しかし、丹比乙女がその後どのような処罰を受けたのかは、現存する記録には記載されていません。彼女の運命は不明であり、歴史の中で静かに消えていった可能性があります。

このように、丹比乙女は奈良時代において重要な役割を果たしたものの、その人生の詳細はほとんど分かっていません。彼女の行動は当時の権力闘争の一端を示すものであり、歴史に名を残しました。今なお彼女に関する研究が続けられており、今後の発見が望まれます。

もう一度検索